「ターゲット」と「ペルソナ」は、マーケティングで頻繁に出てくる言葉ですが、いざ違いを理解しているか問われると、言葉に詰まってしまう人も多いのではないでしょうか。
ターゲットとペルソナを混同したままでいると、どれだけ時間やコストを割いてもユーザーに刺さるコンテンツを作れず、マーケティングに失敗してしまうかもしれません。
この記事では、ターゲットとペルソナの違いやそれぞれの目的、設定するメリットについて紹介します。
どのようにペルソナを設定すればいいかも併せて解説するので、最後まで読めば、より効果的なマーケティングができますよ。
よりユーザーに刺さるコンテンツを作るために、ぜひ目を通してみてください。
目次
ターゲットとペルソナの違い
まずは「ターゲット」と「ペルソナ」の言葉が指す意味を解説します。
どちらもマーケティングの対象を指しますが、違う意味をもつ言葉なので、今一度確認してみてください。
ターゲットは実在する「集団」
ターゲットは、英語では「対象」を意味し、マーケティングにおいては「想定した顧客層」を指します。
年齢や職業、住んでいる地域などの条件は人それぞれ違うため、すべての人に向けた商材をつくることはほぼ不可能です。
「高収入の50代男性」「アウトドア派の30代女性」などと狙いを定めることで、時間やお金など、企業の限られたコストをどう使うかを決められます。
ターゲットを理解するポイントは、「実在する集団」を指した言葉だということです。
「年収5000万円以上の10代」など集団で存在しない条件設定では、商品やサービスを多くの人に売れません。
実際に存在するグループをターゲットにすることで、どのような属性をもつ人たちにアプローチしていくのかを具体的に考えられます。
ペルソナは実在or架空を問わない「個人」
ペルソナとは、もともとは役者が古典劇などで使う「仮面」を意味する言葉です。
スイスの精神医学者・ユングが、ペルソナを「私たちが外界に対してつけている仮面」だと読み解いたことがきっかけで、人に対しても使うようになりました。
現代では、「商品やサービスに設定する具体的なユーザー像」を指す言葉としてビジネスで使われており、架空の人物を設定することが多いです。
抱えている悩みや憧れている人なども具体的に決めた「個人」をつくることで、「ペルソナならどう思い、どう行動するか」とリアルな消費者動向を考えられます。
ターゲットとペルソナの具体例
ターゲットとペルソナが具体的にわかるよう、転職支援サービスのWebページをつくる場合を例にとってみましょう。
ターゲットは「ある条件を満たす集団」なので、性別や年齢、属性など、2~3つを絞るだけでよいです。
【ターゲットの例】
- 20代後半~30代前半
- 男性
- 現在転職を検討中の人
ペルソナを設定する場合は、ターゲットの条件を満たす人々のうち、ひとりの人物について細かく設定します。
【ペルソナの例】
- 名前:田中優太
- 年齢:26歳
- 性別:男性
- 職業:飲食チェーンの正社員(新卒入社)、店長
- 仕事での功績:特別よい功績はとくになし。担当店舗の売上は県内7~8位あたりをキープ
- 居住地:千葉県
- 通勤時間:店舗まで車で15分
- 家族構成:父、母、弟(現在実家を出て一人暮らし)
- 配偶者の有無:結婚歴なし
- 最終学歴:四年制大学卒業(日東駒専未満)
- 年収:240万円
- 趣味:YouTubeを観ること
- よく使うSNS:LINE、Twitter
- 情報収集に使う端末:スマートフォン
- 悩み:アルバイトがすぐやめるので長時間労働しなければならず、睡眠時間が少ない。弟が有名企業に就職したことをきっかけに、飲食業界以外に転職したいと思うようになったが、具体的行動はまだできていない
- 価値観:主にお金を使うのは食費。あまりアクティブではなく、休日はゴロゴロして過ごして終わる
ただし、自社商材に関係がない項目は設定する必要がありません。
転職支援サービスのWebサイトをつくるのに、好きな料理やよく観るスポーツなどは活かせないですよね。
商材に結びつくような項目を選び、普段どのような日々を過ごしているのかをリアルに想像できるよう、ステータスや人格を細かく作ります。
ターゲットとペルソナの違いは目的
ターゲットとペルソナは意味合いだけでなく、目的も違います。
ここでは、ターゲットとペルソナを設定する目的を解説するので、違いを比較してください。
ターゲット設定により属性を絞る
ターゲットを設定する目的は、マーケティングをスムーズに進め、効果を高めることです。
ターゲットを決めずに「できるだけたくさんの人に利用してほしい」とあいまいなビジョンを立ててしまうと、結果的に誰にも刺さらない、中途半端な商材になってしまいます。
限られたコストをどのような人々に向けて使っていくか、戦略を立てやすくするために、アプローチする人々の「くくり(=属性)」を明らかにすることが必要です。
人々をどのような属性で絞り込むかは、下記のような事柄から選びます。
- 人口統計学的な属性:性別・年齢・住んでいる都道府県など
- ビジネス的な属性:職業・役職・年収など
- 行動的属性:使用SNS、趣味、サイトの訪問回数など
ターゲット設定はマーケティングの方向性を定めるものなので、絞る属性は2~3つくらいに留め、幅を持たせておきます。
ペルソナ設定により潜在ニーズを把握する
ペルソナを設定する目的は、ユーザーの「潜在ニーズ(ユーザー自体も気づいていない本当の要望)」を把握することです。
「転職を考えている20~30代男性」がターゲットの場合を例にすると、「転職したい」は自覚しているニーズ(顕在ニーズ)。
潜在ニーズは「時間がほしい」かもしれませんし、「勝ち組になりたい」かもしれません。
潜在ニーズを把握すると、アプローチの仕方が変わってきます。
【例:若手向けの転職支援サービスを展開する場合】
潜在ニーズ | 訴求ポイント |
時間をつくって趣味を見つけたい | ワークライフバランスを重視した職場を探せる |
自慢できる働き方がしたい | 有名企業への転職実績が豊富 |
人間関係から逃れたい | リモートワーク導入企業の求人を多数掲載 |
ターゲット設定をするだけでは、潜在ニーズが何かわかりません。
ビジネスでは、ペルソナの価値観やライフスタイルなどからよりリアルな潜在ニーズを推測し、マーケティング効果を高めていくことが重要です。
ターゲットとペルソナによるメリットの違い
ターゲットとペルソナを設定するメリットは違うため、両方とも設定したほうが効果的です。
ここでは、ターゲットとペルソナそれぞれを設定するメリットを紹介します。
ターゲットを設定するメリット
ターゲットを設定するメリットは、自社商材をどの層にアプローチしていくか、大まかな方向性を決められることです。
ざっくりとしたくくりをすればよく、属性の絞り込みも顧客データなどを活用できるため、早い段階でサービスの全体像を決定できます。
また、早くにターゲットを決めておけば、詳細をすり合わせる前に、各部署に向けて大まかな指示をしておくことも可能です。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナを設定するメリットは、ターゲットを設定するよりもはるかに多いです。
効果の高い3つのメリットを紹介します。
1.ユーザー目線に立ってニーズを把握できる
ペルソナを決めると、リサーチする過程でユーザー目線を理解できます。
ペルソナを設定するためには、多くの調査が必要です。
ペルソナの年齢と職業を「飲食店店長の26歳」と決定したら、飲食店で働く20代後半の年収を調べるでしょう。
すると「年収が240万であったら、あまり贅沢をする機会はなく、貯金もなさそうだ。飲食店で働いているから、食事にはお金を使うかもしれない」などの推測ができます。
ある属性のユーザーについて行動や思考などを徹底的に調査するため、ペルソナをつくることで、実際のユーザーに刺さる商材やマーケティング戦略を練ることが可能です。
2.チーム内でブレがなく業務効率化に繋がる
ペルソナを細かく設定することは、チーム内に生じるユーザー像のズレを防ぐ効果もあります。
「転職したい20代後半~30代前半の男性」としか対象を決めないでいると、Aさんは「キャリアアップのために転職したい人」を思い浮かべ、Bさんは「嫌な職場から逃げ出したい人」を想像するかもしれません。
あいまいな設定だと、各メンバーで考え方や価値観が異なるために、思い浮かべる人物像もズレて、業務のやり直しなどが発生します。
細かい項目でペルソナを設定しておけば、チームメンバー全員が同じ認識をもてるので、業務の効率化やコスト削減が可能です。
いろいろなアイデアが出て方向性がブレそうになったときにも、「ペルソナならどうするか」を忠実に考えることで、軌道修正できますよ。
3.効果的なタイミング・手段でマーケティングできる
ペルソナを設定すると、サイトの設計やこれから行うマーケティングについて、以下のように詳細を決めやすいです。
【転職支援サービスの例】
- サイトの記事は「ですます調」で、優しい言葉遣いで寄り添う感じにする
- ボーナスの情報が出て、キャリアを見つめ直す人が多い6月あたりに広告を打つ
- 忙しい人でも申し込みやすいように、LINEで活動を進めていけることを強調する
Webサイトも広告も、すべてペルソナに刺さるように作ります。
「こういう人もいるのでは?」「この要素も足したほうがいいのでは?」とあれこれ考えなくて済むので、施策が的を射たものになり、効果的な戦略をとることが可能です。
ペルソナを活かすコツと設定するときの注意点
マーケティング戦略を考えるときにターゲットを絞ることは多いと思いますが、ペルソナも正しく設定できているでしょうか?
ペルソナは、ただ架空の人物を作りあげればいいわけではありません。
ここでは、ペルソナをマーケティングに活かすコツと、設定するときの注意点を解説します。
データに基づいてつくる
ペルソナを主観で決めつけてしまうと、実在するユーザーとかけ離れてしまいます。
まず顧客データや外部調査の結果から理想のユーザーを決め、年齢や職業などの「骨組み」をつくってから、内面情報を追加していくのがペルソナのよい作り方です。
「細かいペルソナ設定は、アプローチ対象を限定しすぎてしまうのでは?」と感じるかもしれませんが、ペルソナに酷似したユーザー1人に響くものは、結果的に多くの人に刺さります。
誰か1人が「これはまさに自分のためにつくられた商品・サービスだ!」と思うものは、同じような悩み・期待をもつ多くの人が同様にとらえるのです。
よりリアルなユーザーに近づけるよう、ペルソナ設定はデータにもとづいて作る必要があります。
チーム全員がわかりやすいユーザー像にする
ペルソナを決める際は、チームメンバー全員が理解しやすいプロフィールにすることが大切です。
趣味やよく閲覧するWebサイトなどを有名なものから外してしまうと、「それって何?」と明確にイメージできないメンバーが出てしまいます。
「趣味はネットサーフィン」「よく見るのはLINEニュース」など、誰もが知っている事柄を設定にしたほうがスムーズです。
ペルソナを定期的に見直す
手間をかけて作ったペルソナを効果的に活用するには、定期的に設定を見直すことが重要です。
完璧だと思うペルソナを作っても、意外に反応が悪かったり、想定よりもサイトへのアクセス数が伸びなかったりして、効果が薄いときもあります。
サイト訪問者の状況や、広告効果などのデータを調べ、効果が出ていない要素があったら、思い切って削り、新しいものに変えてみたほうが効果があるかもしれません。
期間を決めて定期的にペルソナを見直し、PDCAを回していくことで、より実際のユーザーに近づけていくことができます。
関連:KPIをビジネスで活用する方法とは?事例やメリットも紹介
まとめ|ターゲットとペルソナの違いを理解してマーケティングに活用しよう
ここまで、ターゲットとペルソナの違いや、それぞれの目的、メリットなどを紹介してきました。
個人の好みが多様化している現代では、不特定多数に向けた商材は売れにくいです。
ターゲットとペルソナの違いを理解して、両者を適切に設定すれば、効果的なマーケティングに繋がります。
ペルソナは一度作っただけでは意味がないので、行動・思考、何が課題で何が喜びかなどを定期的に見直して、よりよいマーケティング活動に活かすことが大切です。
1人に刺さるプロモーションができれば、結果的に大勢から反響を得られるでしょう。
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