「UI/UXデザインを外注したいけれど、どの会社に頼めばいいか分からない」
私のもとにも、こうした相談が年々増えています。検索すれば候補は無数に出てくる。でも、その中から自社に合う1社を見つけるのは、想像以上に難しいことです。実は、UI/UXデザイン会社選びとは「制作物の発注」ではありません。事業課題を共に解くパートナーを見つける行為です。私自身、picks designの代表としてさまざまな企業のUI/UX改善に携わってきましたが、プロジェクトがうまくいくかどうかは「何を作るか」より「誰と組むか」で決まると実感しています。
この記事では、UI/UXデザイン会社の基礎知識から、厳選5社の特徴比較、失敗しない選び方、依頼の流れまでを網羅的に解説します。デザイン会社への発注が初めての方にも分かるように、専門用語をかみ砕きながらお伝えしていきます。
目次
UIUXデザイン会社とは?初心者が知っておきたい基礎知識と役割
UI/UXデザイン会社に依頼する前に、まず「何を頼んでいるのか」を正しく理解しておくことが大切です。このセクションでは、基本用語の意味から、ビジネスへの影響、他の制作会社との違いまでを整理します。
そもそもUIUXとは?基本用語の解説
UI/UXという言葉は、セットで語られることが多いですが、実は指しているものが異なります。
UI(User Interface / ユーザーインターフェース) とは、ユーザーがサービスに触れる「接点」のことです。ボタンの配置、文字の大きさ、色使い、画面のレイアウトなど、目に見えて操作できるすべての要素がUIにあたります。
UX(User Experience / ユーザーエクスペリエンス) とは、サービスを通じてユーザーが得る「体験全体」を指します。「使いやすかった」「迷わず目的を達成できた」「また使いたい」といった感情や満足度がUXです。
つまり、UIはUXを構成する一部であり、UXはUIを含むもっと大きな概念です。優れたUIがあっても、そもそもの導線設計や情報構造が悪ければ、良いUXにはなりません。

UI/UXデザイン会社とは、この「見た目」と「体験」の両方を設計する専門会社です。単にきれいな画面を作るのではなく、ユーザーの行動を理解し、ビジネス目標を達成するための体験を設計する。それがUI/UXデザイン会社の役割です。
UI/UXデザインについてさらに詳しく知りたい方は、「UI/UXデザインとは?」もあわせてご覧ください。
UI/UXデザインの重要性とビジネスに与える影響
「デザインは見た目の話でしょ?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、UI/UXデザインは直接的に事業の数字を動かします。
米国の調査会社Forresterのレポートによると、UXに1ドル投資すると100ドルのリターンが生まれる、つまりROI 9,900%に相当するという試算があります※1。また、McKinseyが300社以上を対象に行った調査では、デザインを経営の中核に据えた企業は、そうでない企業と比べて売上成長率が32ポイント高かったという結果が出ています※2。

具体的なビジネスインパクトとして、以下のような事例があります。
- コンバージョン率の向上: 適切なUI/UXデザインにより、CVR(コンバージョン率)が最大200〜400%向上するケースがある※1
- 離脱率の改善: フォームのUI問題だけで約60%のユーザーが離脱しているというデータがある※4
- 開発コストの削減: 設計段階でユーザビリティ問題を発見・修正すれば、開発後の修正コストの数分の一で済む
- アクセシビリティ対応: 2024年4月の障害者差別解消法改正により、合理的配慮の提供が民間企業にも義務化。UI/UXデザインの段階でアクセシビリティを組み込むことが事実上の必須要件になりつつある
私自身の経験でも、ある業務アプリのUI改善プロジェクトで、画面遷移を3ステップから1ステップに減らしただけで、ユーザーの作業完了率が大幅に向上した事例があります。
また、あるSaaSプロダクトの改善案件では、最初のヒアリングでクライアントが求めていたのは「トップページのリデザイン」でした。しかし実際にユーザーの行動データを分析したところ、問題はトップページではなく、登録フローの途中離脱にありました。課題を正しく定義し直したことで、結果的に当初の依頼とはまったく異なるアプローチになりましたが、クライアントの事業指標は改善しました。
UI/UXは「あったらいいもの」ではなく、事業成長のための「必要な投資」です。
グラフィックデザイン会社や開発会社との違い
UI/UXデザイン会社に依頼しようとしたとき、「グラフィックデザイン会社や開発会社でもできるのでは?」と迷う方がいます。それぞれの守備範囲を整理しておきましょう。
グラフィックデザイン会社は、ロゴ、名刺、ポスター、パッケージなど「静的なビジュアル」の制作が専門です。見た目の美しさには長けていますが、画面遷移の設計やユーザー行動の分析は専門外であることが多いです。
システム開発会社(SIer等)は、機能要件に基づいてシステムを構築する専門家です。技術的に「動くもの」は作れますが、「使いやすいもの」を設計するノウハウは必ずしも持っていません。
UI/UXデザイン会社は、この両者の間に位置します。ユーザーリサーチに基づいて情報設計を行い、プロトタイプ(試作品)で検証し、ビジュアルデザインに落とし込む。さらに、開発チームと連携して「意図通りに実装されるか」まで見届ける。これが、UI/UXデザイン会社が提供する価値です。

| 比較軸 | グラフィックデザイン会社 | UI/UXデザイン会社 | システム開発会社 |
|---|---|---|---|
| 主な成果物 | ロゴ・紙面・バナー | 画面設計・プロトタイプ・UIデザイン | プログラム・システム |
| ユーザーリサーチ | 対象外が多い | 中核業務 | 対象外が多い |
| 情報設計・導線設計 | 限定的 | 中核業務 | 機能要件ベース |
| 開発連携 | なし | 会社による | 自社で完結 |
なお、最近ではGartnerの予測にもあるように、2025年には新規アプリの70%がローコード/ノーコード基盤で構築されるとされています※3。技術のハードルが下がる分、「何を作るか」「どう使わせるか」を設計するUI/UXデザインの重要性は、むしろ高まっています。
UIUXデザイン会社5選|実績・強み・特徴を徹底比較
ここからは、UI/UXデザインの外注先として検討すべき5社を紹介します。今回は、UI/UXデザインを主業務とし、公開実績があり、得意領域がそれぞれ異なる5社を選定しています。会社の規模も得意領域もそれぞれ異なりますので、自社の課題やプロジェクトの特性に合った会社を見つける参考にしてください。
株式会社picks design|課題定義から開発まで一貫対応

picks designは、「ときめきに満ちた”心地よい”を当たり前の世界へ」をMissionに掲げるUI/UXデザイン会社です。愛知県最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」に入居し、6名の少数精鋭チームで活動しています。
特徴的なのは、代表の私自身がすべてのプロジェクトに直接参加することです。大手のデザイン会社では、営業担当がヒアリングし、別のディレクターが仕様をまとめ、さらに別のデザイナーが手を動かす――という分業体制が一般的です。しかしpicks designでは、課題の把握から設計、制作、品質チェックまで、代表が一貫して関わります。意思決定が速く、認識のズレが起きにくい体制です。
SaaS・業務アプリのグロースフェーズ支援に強みがあります。すでにリリースされたプロダクトの「ここが使いにくい」「ユーザーが定着しない」といった課題を分析し、改善を重ねていく。こうした泥臭い改善業務こそ、picks designが得意とする領域です。
また、私たちは「言われたものを作る」のではなく、KGI(最終目標)やKPI(中間指標)の設定から一緒に考える共創型のプロセスを大切にしています。「何をデザインするか」の前に「何を解決するか」を定義する。だからこそ、納品後に「思っていたものと違った」というギャップが生まれにくいのです。
picks designの制作プロセスの詳細はこちらでご覧いただけます。
RECOMMENDED FOR
主な制作実績:
- GENCHO 現場調査アプリの改善 — 建設現場で使われる調査業務効率化アプリのUI/UX改善。現場のリアルな利用シーンを踏まえた画面設計で、操作性を向上
- 鮮度チェッカー「irodori」 — Milk.株式会社の食品鮮度チェックサービス。ユーザーが直感的に判定結果を理解できるUIを設計
- 血糖値アプリ — 株式会社グランデのヘルスケアアプリ。日常的に使うアプリだからこそ、継続利用を促すUX設計に注力
- マナe Eラーニング — 株式会社manabyの学習プラットフォーム。学習者のモチベーション維持を考慮したUI/UXを実現
- 産学連携プラットフォーム「co-sou」 — 産学連携のマッチングを促進するプラットフォーム設計
デザイン領域での取り組みとして、以下の受賞歴があります。
主な受賞歴:
- Good Design Award 2019
- OMOTENASHI SELECTION 2019
- 名古屋ハッカソン最優秀賞 2020
- 他、JID award 2018・JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2018など計7件
デザインだけでなく、フロントエンド・バックエンドの開発まで一貫して対応できるため、「デザインの意図が実装で崩れる」という問題が起きにくい体制です。また、STATION Aiに入居するスタートアップとして、事業成長のリアリティを肌で感じながら仕事をしています。クライアントの事業フェーズに寄り添った提案ができるのは、この環境ならではです。
SaaS、ヘルスケア、教育、建設DXなど幅広い業種での実績があり、メディア出演としてはZIP-FM「startup [N]」にも出演しています。
picks designはこんな企業におすすめ:
- 代表と直接コミュニケーションを取りながら進めたい企業
- SaaS・業務アプリの改善フェーズで、数字に基づく改善を行いたい企業
- デザインから開発まで、一社で完結させたい中小〜中規模のプロジェクト
- スタートアップや新規事業で、スピード感を持って進めたい企業
株式会社メンバーズ|豊富なUXリサーチとコンサル実績

メンバーズは、東証プライム上場の大手デジタルマーケティング企業です。2025年にはUXデザイン専門子会社「nu.Design」を設立し、100名超の規模でUXデザインに特化した支援体制を構築しています。
最大の強みは、大規模組織のDX推進を支えるUXリサーチとコンサルティングの実績です。金融機関、教育機関、自治体、大手企業など、ステークホルダーが多く要件が複雑なプロジェクトを数多く手がけてきた経験があります。
組織としての体制が厚く、UXリサーチャー、UIデザイナー、サービスデザイナーなど、専門スキルごとの人材が揃っている点も特徴です。単発のデザイン案件というより、中長期でのDX支援やUX組織の内製化支援に強みを発揮します。
RECOMMENDED FOR
メンバーズはこんな企業におすすめ:
- 大企業のDX推進プロジェクトで、組織的にUXを推進したい場合
- UXリサーチを体系的に実施し、データに基づく意思決定を行いたい場合
- 長期的にUXデザインチームの内製化を目指している場合
フェンリル株式会社|アプリ開発に強いデザイン部と開発力

フェンリルは大阪発のデザイン&テクノロジー企業で、400社以上、600を超えるアプリ開発の実績を持っています。任天堂やNHKといったナショナルクライアントとの取引実績もあり、品質への信頼が厚い企業です。
最大の特徴は、デザイナーとエンジニアが同一チームで動く体制です。デザインと開発が分離することで生じる「デザインの意図が伝わらない」「実装段階で妥協が入る」といった問題を、チーム構成そのもので解消しています。
アプリのUI/UX設計から、iOS/Android/Webの開発、リリース後の運用まで一気通貫で対応できるため、特にアプリ開発においては設計から実装までをワンストップで依頼したい企業にとって有力な選択肢です。
RECOMMENDED FOR
フェンリルはこんな企業におすすめ:
- ネイティブアプリの設計から開発までを一括で依頼したい場合
- 大規模・高品質なアプリ開発の実績がある会社を探している場合
- デザインと開発の連携品質を重視する場合
ニジボックス|先進的なプロトタイプと提案力

ニジボックスはリクルートの100%子会社として設立されたデザイン会社です。リクルートグループで培われたサービス設計の知見を活かし、UXリサーチからプロトタイプ制作、ユーザーテストまで、体験設計の上流工程に強みを持っています。
社員の女性比率が68%と高く、多様な視点からのデザインアプローチが期待できます。「作る前に検証する」プロセスを徹底しており、プロトタイプ(実際に触れる試作品)を早い段階で制作し、ユーザーテストで仮説を検証してから本制作に入るスタイルが特徴です。
リクルートグループという大規模サービスの運営実績があるからこそ、「なんとなく良さそう」ではなく、データに基づいた提案ができる点が強みです。
RECOMMENDED FOR
ニジボックスはこんな企業におすすめ:
- リサーチ起点でサービス設計を進めたい場合
- プロトタイプでの検証を重視し、手戻りリスクを減らしたい場合
- 大規模サービスの知見を活かした提案を求める場合
株式会社JIITAK|最高のユーザーエクスペリエンスを提供

JIITAKは、Flutter公式認定パートナーとして、モバイルアプリ開発に特化したUI/UXデザイン会社です。日本とインドのグローバル体制を構築しており、コストパフォーマンスとスピードの両立を実現しています。
Flutterとは、Googleが開発したモバイルアプリフレームワークで、iOS・Androidの両方に対応するアプリを1つのコードベースで開発できる技術です。JIITAKはこのFlutterに公式認定されているため、技術的な信頼性が高いのが特徴です。
特にスタートアップ向けのMVP(Minimum Viable Product / 実用最小限の製品)開発に強みがあり、「まず市場に出して検証する」フェーズのプロダクト開発を多く手がけています。
RECOMMENDED FOR
JIITAKはこんな企業におすすめ:
- FlutterでのモバイルアプリUI/UX開発を検討している場合
- スタートアップで、MVP開発をスピーディーに進めたい場合
- 日印のグローバル体制によるコスト最適化を求める場合
各社の得意分野・対応範囲・事例を比較
5社の特徴を一覧で比較してみましょう。

この比較表を見ると分かるように、5社はそれぞれ得意領域が異なります。「どこが一番優れているか」ではなく、「自社の課題にどこが一番合うか」で選ぶことが大切です。
さらに多くのUI/UXデザイン会社を比較したい方は、「UI/UXデザイン会社の比較まとめ」もご覧ください。
失敗しないUIUXデザイン会社の選び方・比較ポイント
5社の特徴を把握したところで、次は「自社に合う会社をどう選ぶか」の判断基準を解説します。私がクライアントから「前の会社で失敗した」と相談を受けるケースの多くは、この選定段階での見極めが甘かったことに起因しています。
要件定義・課題整理のヒアリング視点を持つ重要性
UI/UXデザイン会社を選ぶうえで、私が最も重視しているポイントは「最初のヒアリングで何を聞いてくるか」です。
優れたデザイン会社は、初回の打ち合わせで「どんなデザインにしたいですか?」とは聞きません。代わりに、こんな質問をしてきます。
- 「この事業で、今一番困っていることは何ですか?」
- 「ユーザーはどんな人で、どんな状況でこのサービスを使いますか?」
- 「このプロジェクトが成功した状態を、数字で表すとどうなりますか?」
つまり、制作物の仕様ではなく、事業課題から入る会社を選ぶべきです。「こんなデザインを作ります」という提案しかしてこない会社は、UIの表面的な改善にとどまる可能性があります。
選定時に聞くべき具体的な質問については、「UI/UXデザイン会社選定で必ず聞くべき20の質問リスト」にまとめています。
クオリティ・コスト・納期のバランスと発注時のチェックポイント
デザイン会社の選定で避けて通れないのが、QCD(Quality / Cost / Delivery)のバランスです。
- 品質を最優先にしたい場合: 実績の豊富さ、UXリサーチ体制の有無を確認
- コストを抑えたい場合: チーム規模が小さい会社やフリーランスを検討。ただし品質管理は自社側の負担が増える
- 納期が最重要の場合: 開発まで一貫対応できる会社を選ぶと、連携ロスが減る
ここで注意したいのは、「安さ」で選ぶと結局高くつくケースが非常に多いことです。安価な見積もりの裏には、ユーザーリサーチの省略、プロトタイプ検証の不足、修正回数の制限など、品質に直結するプロセスのカットが隠れていることがあります。
私は「予算内でどこまでできるか」を正直に話してくれる会社を信頼しています。予算が限られているなら、「全部やる」のではなく「最もインパクトが大きい部分に絞って取り組む」提案をしてくれる会社が良いパートナーです。
UI/UXデザインの料金相場について詳しくは、「UI/UX発注の料金相場ガイド」をご覧ください。
外注・内製・フリーランスの業態別メリット・デメリット
UI/UXデザインの調達方法は、大きく3つに分かれます。それぞれのメリット・デメリットを整理しておきましょう。

デザイン会社への外注
- メリット: チームとしての知見が蓄積されている。複数メンバーで対応でき、品質が安定しやすい
- デメリット: フリーランスと比べてコストが高め。会社の文化やプロセスへの適応に時間がかかることがある
- 向いている場面: 中〜大規模のプロジェクト、UXリサーチから開発連携までを一括で任せたい場合
自社での内製化
- メリット: ビジネスの文脈を深く理解したうえでデザインできる。継続的な改善がしやすい
- デメリット: 採用・育成コストが大きい。外部の視点が入りにくく、「社内の常識」がユーザー目線からずれるリスクがある
- 向いている場面: プロダクトが成長期に入り、継続的にUI/UX改善を回す必要がある場合
フリーランスへの依頼
- メリット: コストを抑えやすい。特定スキルに特化した人材をピンポイントで確保できる
- デメリット: 属人的になりやすく、担当者の稼働状況に左右される。大規模案件には向かない
- 向いている場面: 小規模な改善案件や、社内チームの一時的な補強
どの方法が最適かは、プロジェクトの規模、社内リソース、期間によって変わります。「最初はデザイン会社に外注して進め方を学び、徐々に内製化する」というハイブリッド型も有効な選択肢です。
提案力・専門知識・チーム体制の比較
デザイン会社を比較するとき、ポートフォリオ(制作実績)の見た目だけで判断するのは危険です。大事なのは、「なぜそのデザインにしたのか」を説明できるかどうかです。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 提案力: 課題に対して複数の解決策を提示できるか。「言われた通り作る」だけでなく、代替案や改善案を出してくれるか
- 専門知識: 自社が属する業界や、類似するプロダクトへの理解があるか。業界特有のユーザー行動を把握しているか
- チーム体制: 誰がプロジェクトに関わるのか明確か。担当者の経験年数や過去の実績を確認できるか
- コミュニケーション: レスポンスの速さ、報告・連絡・相談のスタイルが自社の文化に合うか
UI/UXデザイン会社の評価基準について詳しくは、「UI/UXデザイン会社の選び方7つの評価基準」もご参考ください。
ユーザー目線の検証・フィードバック体制の有無
UI/UXデザイン会社を選ぶうえで、もうひとつ見落とされがちなポイントがあります。それは、「ユーザーテスト・検証の体制があるかどうか」です。
デザインの良し悪しは、デザイナーや社内の好みで決めるものではありません。実際のユーザーに使ってもらい、その反応を観察して改善する。このサイクルが回せるかどうかで、成果は大きく変わります。
確認すべき項目は以下の通りです。
- ユーザーテスト(ユーザビリティテスト)の実施体制があるか
- プロトタイプ段階での検証を行うか
- 納品後のフィードバック対応や改善サイクルの支援があるか
- データ分析に基づく改善提案ができるか
私の経験では、「デザインが完成したら終わり」というスタンスの会社と、「リリース後のデータを見て改善提案をしてくれる」会社では、最終的なプロダクトの完成度に大きな差が出ます。
たとえば私たちがGENCHOの現場調査アプリを改善した際も、初回リリースで終わりではなく、現場のフィードバックをもとに複数回のUI改善サイクルを回しました。最初のリリースでは見えなかった課題が、実際の利用データから次々と浮かび上がってきたのです。こうした「リリース後も伴走する」姿勢があるかどうかは、選定時にぜひ確認してください。

UIUXデザイン会社に依頼する際の流れと注意点
UI/UXデザイン会社が決まったら、次はプロジェクトの進め方です。ここでは、典型的なプロジェクトフローと、各段階で注意すべきポイントを解説します。
ヒアリング〜要件定義〜設計・プロトタイプのフローを解説
UI/UXデザインのプロジェクトは、一般的に以下のフローで進みます。

ヒアリング・課題整理(1〜2週間)
事業の課題、ターゲットユーザー、競合状況、プロジェクトのゴールを整理します。この段階が最も重要で、ここでの認識合わせが甘いと後工程でブレが生じます。
リサーチ・分析(2〜4週間)
ユーザーインタビュー、競合分析、既存サービスのヒューリスティック評価(専門家による使いやすさ評価)などを実施します。
情報設計・ワイヤーフレーム(2〜4週間)
リサーチ結果に基づいて、画面構成や導線を設計します。この段階ではビジュアルデザインには入らず、「何を、どこに、どんな順番で配置するか」を決めます。
UIデザイン・プロトタイプ制作(3〜6週間)
ワイヤーフレームをもとに、色、フォント、アイコンなどのビジュアル要素を設計し、実際に操作できるプロトタイプを制作します。
ユーザーテスト・検証・改善(2〜4週間)
プロトタイプを実際のユーザーに試してもらい、問題点を洗い出して改善します。必要に応じて3〜5のステップを繰り返します。
スケジュール・予算・発注範囲の明確化
プロジェクトを円滑に進めるために、発注前に以下の3点を明確にしておきましょう。
スケジュール:
- 「いつまでに必要か」のハードデッドラインはあるか
- リサーチや検証に十分な時間を確保できるか
- 社内の承認プロセスにかかる期間も考慮に入れているか
予算:
- 全体予算の上限はいくらか
- デザインと開発で予算は分かれているか
- 追加の検証やリサーチが必要になった場合の余裕はあるか
発注範囲:
- デザインだけか、開発まで含むか
- 既存プロダクトの改善か、新規の立ち上げか
- 納品物は何か(デザインデータ、プロトタイプ、実装コードなど)
これらが曖昧なまま進むと、「想定より費用がかかった」「思っていた成果物と違う」というトラブルの原因になります。
社内担当者とデザイナーの連携・フィードバックのコツ
デザイン会社に依頼する際、意外と見落とされるのが「社内側の体制」です。
私がプロジェクトを進める中で感じるのは、社内に「決められる人」が明確にいるプロジェクトほどスムーズに進むということです。逆に、フィードバックのたびに「上に確認します」と持ち帰りが発生するプロジェクトは、スケジュールが大幅に遅れがちです。
社内側で準備すべきことは以下の通りです。
- 意思決定者を明確にする: フィードバックを出す人と、最終的にOKを出す人を決めておく
- フィードバックは「具体的に」出す: 「なんか違う」ではなく、「このボタンは目立たないので、ユーザーが見落としそう」のように理由を添える
- 定期的なミーティングを設ける: 週1回程度の進捗確認があると、方向性のズレを早期に修正できる
- 社内の関係者に事前に共有する: プロジェクトの目的とスコープを関係者に伝えておくと、後から「聞いていない」というトラブルを防げる
資料・提案内容の見極めと評価ポイント
複数のデザイン会社に相見積もりを取った場合、提案資料のどこを見ればよいか。以下のポイントを参考にしてください。
- 課題理解の深さ: こちらが伝えた課題をどれだけ深く理解し、自分たちの言葉で再定義しているか
- プロセスの明確さ: どのような手順で進めるか、各段階でのアウトプットは何かが明示されているか
- 根拠の有無: 「こうしたほうがいい」という提案に、データや事例に基づく裏付けがあるか
- リスクへの言及: うまくいかない場合の対処方針や、想定リスクに触れているか
- 費用の内訳: 「デザイン一式 ○○万円」ではなく、工程ごとに費用が分かれているか
「提案資料がきれい」と「提案内容が的確」は別物です。見た目の美しさだけでなく、中身のロジックで判断しましょう。
開発会社やシステム開発とのワンストップ連携の可能性
UI/UXデザインの成果物は、最終的に開発チームによって実装されます。ここで問題になりやすいのが、デザイン会社と開発会社が別の場合の「引き継ぎロス」です。
デザインデータを渡して「あとはよろしく」では、デザイナーの意図が正しく実装に反映されないことが少なくありません。微妙な余白の違い、アニメーションのタイミング、レスポンシブ時の挙動など、デザインデータだけでは伝えきれない情報は多くあります。
この問題を解決する方法は2つあります。
- デザインから開発まで一貫対応できる会社を選ぶ: picks designやフェンリル、JIITAKのように、社内にエンジニアがいる会社であれば、デザインの意図を損なわず実装できます
- デザイン会社に開発フェーズへの関与を依頼する: デザイン会社が開発チームとの定例ミーティングに参加し、実装品質をチェックする体制を作る
いずれにせよ、「デザインと開発の接続点」をどう設計するかは、プロジェクト成功の重要な要素です。
UIUXデザイン会社選定でよくある悩み・失敗事例と解決策
ここからは、UI/UXデザイン会社の選定・プロジェクト進行でよくある失敗パターンと、その対策を紹介します。
実績重視かコスト重視か?明確化すべきゴール・ニーズ
「実績が豊富な会社に頼みたいけれど、予算が限られている」これは最も多い悩みのひとつです。
この問いに対する私の答えは明確です。まず「何を実現したいか」を定義してから、予算と照らし合わせること。順番が逆になると、「安い会社を選んだけど、結局やり直しで倍のコストがかかった」という事態に陥ります。
具体的には、以下のステップで考えることをおすすめします。
- プロジェクトのゴールを数字で定義する(例: 会員登録率を2倍にする、問い合わせ数を月50件にする)
- そのゴール達成に必要なプロセスを洗い出す(リサーチは必要か、プロトタイプは何回検証するか)
- 必要なプロセスに基づいて予算を組む
UI/UXデザインの失敗事例について詳しくは、「UI/UXデザイン失敗事例15選」もご覧ください。
専門性不足・アウトプット不一致など失敗ケースの分析

私がクライアントから聞いた「前の会社での失敗」を分析すると、パターンは大きく3つに分類できます。
パターン1: 見た目はきれいだが、使いにくい
グラフィックデザインの延長でUI/UXを受けている会社に多いケースです。ビジュアルは美しいものの、ユーザーの動線や操作性が考慮されていない。結果として、リリース後に「使いにくい」という声が上がり、作り直しになります。
パターン2: 要件と成果物がズレる
初期のヒアリングが不十分で、「思っていたものと違う」が納品直前に判明するケースです。途中経過の共有が少ない会社、プロトタイプでの確認工程がない会社で起きやすい問題です。
パターン3: デザインは良いが、実装で崩れる
デザイン会社が納品したデータを、別の開発会社が実装する過程で、デザインの意図が失われるケースです。特にアニメーションやインタラクション(ユーザーの操作に対する画面の反応)に関して、デザインデータだけでは意図が伝わりにくい部分があります。
私のところに「他社で進めていたプロジェクトがうまくいかなくなった」と相談に来るケースが年に数回あります。その多くに共通するのは、初期のヒアリングが浅く、表面的な要件だけで走り始めてしまっていること。途中から引き継ぐと、そもそもの課題定義からやり直す必要があり、結果的にコストも時間も余計にかかってしまいます。
これらの失敗を避けるために、「初回ヒアリングの質」「中間成果物での確認プロセス」「開発連携の体制」の3点は、選定時に必ず確認してください。
UXリサーチやユーザー検証が不足しがちなケース
「予算と時間が限られているので、リサーチは省略して、すぐにデザインに入りたい」こうした要望を受けることがあります。気持ちは分かりますが、リサーチの省略は最も高くつく節約です。
ユーザーの行動や課題を把握せずにデザインすると、「作ってみたけどユーザーに響かなかった」というリスクが格段に高まります。Forresterの調査でも、設計段階で問題を発見・修正するコストは、開発後に修正するコストの数分の一で済むことが示されています※1。
予算が限られている場合でも、最低限やるべきリサーチがあります。
- 既存データの分析: アクセス解析、問い合わせデータ、カスタマーサポートのログなど、すでに社内にあるデータを活用する
- 簡易ユーザーインタビュー: 5人でもいいので、実際のユーザーに話を聞く。5人で約85%のユーザビリティ問題が発見できるとされています※5
- 競合分析: 競合サービスのUIを分析し、良い点・改善点を整理する
既存プロダクト・システムの改善依頼時の注意点
新規のサービス立ち上げではなく、「既存のプロダクトやシステムのUIを改善したい」という依頼も多くあります。この場合、特有の注意点があります。
既存ユーザーへの配慮: すでにサービスを利用しているユーザーがいる以上、UIを大幅に変更すると混乱を招く可能性があります。段階的な改善(フェーズド・アプローチ)を計画しましょう。
技術的な制約の共有: 既存システムの技術スタックやアーキテクチャによっては、デザイン上やりたいことが技術的に難しい場合があります。デザイン会社に事前に技術情報を共有することが重要です。
改善効果の測定: 改善前のデータ(現状の数値)を取得しておかないと、改善後に「どれだけ良くなったか」を評価できません。改善プロジェクトの開始前に、必ずベースラインとなるデータを取得しておきましょう。
既存プロダクト改善の具体例は、picks designの「GENCHOの改善事例」でご覧いただけます。
UIUXデザイン会社の選定に迷ったら|相談・資料請求・事前準備
「いろいろ調べたけれど、結局どこに頼むべきか分からない」。そんな方に向けて、具体的な次のアクションをご提案します。
無料相談・ヒアリングの活用方法
多くのUI/UXデザイン会社は、初回の無料相談を受け付けています。この機会を有効に活用するためのコツをお伝えします。
無料相談で確認すべきこと:
- 自社の課題に対して、どんなアプローチを提案してくれるか
- 担当するチームメンバーの経験や実績
- 見積もりの概算と、費用に含まれるプロセス
- 類似案件の実績があるか
無料相談でやってはいけないこと:
- 「とりあえず見積もりだけください」と、課題を共有せずに価格だけ聞く
- 複数社に同じRFP(提案依頼書)を投げて、価格だけで比較する
相談の場では、「うちの課題をどう理解してくれるか」を観察してください。良いパートナーは、相談の段階から本質的な質問をしてくれます。
依頼前に整理しておくべき業務内容・要件
デザイン会社に相談する前に、社内で以下の項目を整理しておくと、打ち合わせがスムーズに進みます。完璧に整理する必要はありませんが、答えられる範囲で準備しておくと、デザイン会社側もより具体的な提案を出しやすくなります。

整理しておくべき6つの項目:
- 事業の概要: どんなサービス・プロダクトか。誰が使うのか
- 現状の課題: 何が問題で、なぜデザインの力が必要なのか
- プロジェクトのゴール: 成功をどう測るか(KPI・KGI)
- 予算の目安: 上限額や、予算の柔軟性
- スケジュール: いつまでに必要か。マイルストーンはあるか
- 発注範囲: デザインのみか、開発まで含むか。納品物は何か
資料請求をご希望の方は、「picks designの資料請求はこちら」からお気軽にどうぞ。
SNS・Webサイト・口コミでの会社評価の調査ポイント
デザイン会社を事前に調べる際、以下の情報源が参考になります。
Webサイト(ポートフォリオ):
- 制作実績の数と多様性
- 実績に「プロセス(どう進めたか)」の説明があるか
- ブログや技術記事の発信があるか(専門性の指標)
SNS:
- 会社や所属デザイナーの情報発信の質と頻度
- 業界内での評判やつながり
口コミ・紹介:
- 知人や取引先からの紹介が最も信頼性が高い
- ただし、自社の課題に合うかは別問題。紹介でも必ず自分で確認すること
注意点: 口コミサイトの評価は参考程度にとどめてください。デザインの成否はプロジェクトの文脈に大きく依存するため、他社で成功した会社が自社でも成功するとは限りません。
専門性・強みを見極める質問・ケーススタディ
最後に、デザイン会社との打ち合わせで使える「見極めの質問」をいくつか紹介します。
見極めの質問例:
- 「過去に似た課題を扱ったプロジェクトはありますか?その結果はどうでしたか?」
- 「ユーザーリサーチはどのような方法で行いますか?」
- 「デザインの方向性が合わなかった場合、どう対応しますか?」
- 「プロジェクト中の進捗共有はどのような頻度・方法で行いますか?」
- 「デザインと開発の連携はどのように行いますか?」
これらの質問に対して、具体的なエピソードや事例を交えて答えられる会社は信頼できます。逆に、「大丈夫です、お任せください」としか言えない会社は注意が必要です。
UIUXデザイン会社の選定まとめ
この記事では、UI/UXデザイン会社の選び方を、基礎知識から5社の比較、選定ポイント、依頼の流れ、失敗事例まで網羅的に解説してきました。
改めて、最も大切なことをお伝えします。
UI/UXデザイン会社選びは、「制作物の発注」ではなく「事業課題を共に解くパートナーを見つける行為」です。
ポートフォリオの見栄えや価格だけで判断するのではなく、以下の3つの視点で選んでください。
- 課題理解力: 自社の課題を正しく理解し、本質的な解決策を提案してくれるか
- プロセスの透明性: どのような手順で進めるか、中間成果物をどう共有するかが明確か
- パートナーシップ: 納品して終わりではなく、事業の成長に寄り添ってくれるか
デザイン会社選定5項目チェックシート
記事の内容を踏まえて、選定時にそのまま使えるチェックシートを用意しました。候補の会社ごとにチェックしてみてください。
初回相談で「どんなデザインにしたいか」ではなく「何に困っているか」から入るか
ヒアリング→リサーチ→設計→検証の各段階と成果物が明示されているか
プロトタイプでのユーザーテスト、リリース後の改善サイクルに対応しているか
「一式○○万円」ではなく、工程ごとの費用と含まれるプロセスが分かるか
納品して終わりではなく、データに基づく改善提案や運用支援があるか
5項目すべてにチェックが入る会社であれば、パートナーとしての信頼性は高いといえます。3項目以下の場合は、不足している部分について追加で確認することをおすすめします。
この記事が、あなたの会社にとって最適なUI/UXデザインパートナーを見つける一助になれば幸いです。
もし「自社の課題にどんなアプローチが合うか分からない」とお感じでしたら、まずは気軽にお話しませんか。picks designでは、プロジェクトの規模に関わらず、無料相談で課題のヒアリングからお手伝いしています。
引用・参考文献
※1: The Six Steps For Justifying Better UX — Forrester Research。UXへの投資対効果(ROI 9,900%)やCVR向上に関する調査レポート
※2: The Business Value of Design — McKinsey & Company。300社以上を対象にデザイン経営と売上成長の相関を分析した調査
※3: Gartner Forecasts — Gartner。2025年には新規アプリの70%がローコード/ノーコード基盤で構築されるという予測
※4: E-Commerce Checkout Usability — Baymard Institute。フォームのUI問題による離脱率に関する調査データ
※5: Why You Only Need to Test with 5 Users — Jakob Nielsen, Nielsen Norman Group。5人のユーザーテストで約85%のユーザビリティ問題が発見できるという研究







