目次
なぜ今、UIUXデザイン発注の失敗事例から学ぶべきなのか
先日、あるIT企業の発注担当者から「300万円かけたUIリニューアルが全くユーザーに受け入れられなかった」という相談を受けました。結局、旧デザインに戻すハメになったそうです。残念ながら、こうした話は珍しくありません。
デジタル化が進む今、UI/UXデザインの重要性は言うまでもありません。多くの企業がUI/UXデザインを改善した結果、売上の向上や顧客満足度のアップに繋がったという話もよく耳にします。だけど、同時に、UI/UXデザイン関連のプロジェクトで当初の目標を達成できなかったケースも少なくないのが現実です。
「発注したのに使えない」「予算オーバー」「納期遅延」…こうした失敗談をよく耳にします。私自身、長年デザイン発注の両サイドに立ってきましたが、同じような失敗パターンが繰り返されるのを目の当たりにしてきました。
この記事では、私が実際に見てきた失敗事例15選と、それらを乗り越えるための具体的な対策をお伝えします。これから発注を考えている方はもちろん、過去に苦い経験をした方にも、きっと明日から使える実践的なヒントが見つかるはずです。
カテゴリー別UIUXデザイン発注の失敗事例5選:要件定義の不備
失敗事例1:「なんとなく良いデザインを」という曖昧な発注
ある通販サイトのリニューアル案件。クライアントは「モダンで使いやすいデザインを」という指示だけで発注しました。結果、デザイナーは最新トレンドを取り入れた洗練されたUIを納品。しかし、主要顧客層の50代女性には複雑すぎて、コンバージョン率が大幅に下落してしまいました。
時間的損失:3ヶ月、財務的損失:約500万円。
失敗事例2:競合サイトのデザインを「パクれ」指示
金融系ベンチャーが競合他社のUIを「参考に」と指示。デザイナーは差別化を図ろうとしましたが、クライアントの「もっと似せて」という要求で妥協。結果、独自性のない印象の弱いデザインに。ユーザーからの「どこかで見たような」という声が続出し、ブランド価値が低下。
時間的損失:2ヶ月、財務的損失:約350万円。
失敗事例3:UXリサーチなしでUI改善を発注
あるBtoCアプリの運営会社が、「操作性を良くしたい」という理由だけでUIリニューアルを発注しました。しかし、既存ユーザーの利用実態やニーズを十分に調査しないまま進行した結果、慣れ親しんだ機能の位置が大きく変更され、ユーザーからの混乱や不満が生じました。その結果、アクティブユーザー数が減少し、急遽、部分的に旧UIに戻す対応を余儀なくされました。
時間的損失:5ヶ月、財務的損失:約650万円。
カテゴリー別UIUXデザイン発注の失敗事例:コミュニケーション断絶と予算問題
失敗事例4:中間フィードバックの欠如
ある不動産ポータルサイトの案件。発注側は「一任するから」と中間チェックを怠り、完成間近になって初めて全体を確認。想定と大きく異なるデザインに愕然とするも、修正に必要な時間と費用が捻出できず、不満を抱えたまま納品物を受け入れる結果に。ユーザーテストでも使い勝手の悪さが指摘され、追加改修で400万円の予算超過。
失敗事例5:担当者の度重なる変更
Web予約システムの開発中に、クライアント側の担当者が3回交代。引継ぎが不十分なまま新担当者が前任者の決定事項を覆す事態が続発。デザイナーは振り出しに戻る作業を繰り返し、モチベーション低下。最終的に納期を2ヶ月超過し、関係悪化により保守契約も失注。
時間的損失:4ヶ月、予算超過:約250万円。
失敗事例6:予算の細分化不足
ある中規模ECサイトのリニューアルプロジェクトで、デザイン費用として一括で500万円を計上しましたが、ワイヤーフレーム、ビジュアルデザイン、プロトタイピング、ユーザーテストなどの各工程に対する予算配分が明確でなかったため、初期段階で予算の大部分を消費しました。その結果、後工程が圧迫され、特にユーザーテストの不足が原因でローンチ後に多数の操作性問題が発生。急遽対応が必要となり、追加コストが発生しました。
私がコンサルティングに入ったあるプロジェクトでは、こうした予算問題を防ぐため「工程別予算配分表」を作成し、各フェーズ終了時の「予算消化確認会議」を設けることで、同様の問題を未然に防ぐことに成功しました。
カテゴリー別UIUXデザイン発注の失敗事例:テスト不足とユーザー理解の欠如
失敗事例7:スマホ対応の考慮不足
あるB2B向けシステムのリニューアルにおいて、デスクトップ版のみを重視し、モバイル対応についてはデザイナーに「よろしく」と丸投げされてしまいました。完成後、現場スタッフの38%が実際にスマホでシステムを利用していることが判明しましたが、モバイル版はほぼ使用不可の状態でした。その結果、急遽モバイル対応を進めることとなり、追加コストが発生しました。
失敗事例8:アクセシビリティを無視したデザイン発注
公共機関のWebサイトリニューアルで、視覚的な美しさだけを優先。色覚多様性への配慮やスクリーンリーダー対応などのアクセシビリティ要件を発注仕様に含めず。完成後、障害者団体から指摘を受け、法的リスクも浮上。
修正対応で180万円の追加費用と3ヶ月の遅延が発生。
失敗事例9:実際のコンテンツを想定しないデザイン
コーポレートサイトのリニューアルで、ダミーテキストによるデザインのみを発注。実際のコンテンツ量が想定より大幅に多く、美しいレイアウトが崩れる事態に。また、長文コンテンツの読みやすさが考慮されておらず、ユーザーの平均滞在時間が大幅に減少。
部分的な再設計で140万円の追加コストが発生。
失敗事例10:ユーザージャーニーの考慮不足
保険商品のランディングページ制作で、視覚的なインパクトのみを重視したデザイン発注。ユーザーの商品理解プロセスや意思決定フローを考慮しなかったため、見た目は良いものの、コンバージョン率が旧デザインより大きく低下。
分析と再設計で約2ヶ月のタイムロスと230万円の追加コストが発生。
UIUXデザイン発注失敗を防ぐ7つの実践的対策
対策1:詳細なRFP(提案依頼書)テンプレートの活用
私が特に推奨するのは、曖昧さを排除した詳細なRFP作成です。具体的には以下の項目を必ず含めましょう:
- プロジェクトの背景と目的(具体的な数値目標を含む)
- ターゲットユーザーの詳細プロファイル(年齢層、行動特性等)
- 必須機能とオプション機能の明確な区分
- デザインの方向性と参考事例(好きな点と嫌いな点も明記)
- プロジェクトのタイムライン(中間チェックポイント含む)
- 予算の詳細な内訳と支払い条件
成功事例:ある製造業のWebサイトリニューアルでは、この方法により当初見積もりからの予算超過をゼロに抑え、プロジェクト期間も予定通り完了。コンバージョン率は前年比36%向上という結果に。
対策2:プロトタイピングの段階的承認プロセス
デザイン発注で重要なのは、一気に完成を目指さないことです。以下の段階を踏むことで、リスクを最小化できます:
- ワイヤーフレーム段階での徹底レビュー(情報設計の確認)
- スタイルタイル/デザインシステム要素の早期承認(ビジュアル方向性の確認)
- 部分的な高精度プロトタイプでの検証(重要機能の操作性確認)
この方法を導入したECサイトでは、従来の方法と比較して最終段階での修正コストが大幅に削減され、開発期間も短縮されました。例えば、プロセスの効率化やユーザーリサーチの早期導入が効果を発揮し、修正作業や再開発の頻度が減少した事例も報告されています。
UIUXデザイン発注を成功に導く実践的対策(2)
対策3:スコアリングシートによるデザイナー/会社選定
「なんとなく良さそう」な選定は失敗の元。私が実際に使っている評価基準をシェアします:
評価基準 | 配点 | 確認方法 |
---|---|---|
類似業界の実績 | 20点 | ポートフォリオ確認 |
提案の具体性 | 15点 | 初回ミーティング内容 |
コミュニケーション力 | 20点 | 質問への応答速度と質 |
技術スキルの幅 | 15点 | 過去プロジェクトの技術要素 |
ユーザー中心設計の理解 | 15点 | プロセス説明の明確さ |
予算・スケジュール管理力 | 15点 | 過去案件の予定vs実績 |
成功事例:あるSaaS企業では、このスコアリングシートで選定したデザイン会社とのプロジェクトが、前回までの平均と比較して納期遵守率100%、予算内完了率95%という驚異的な結果を達成しました。
対策4:「デザインクリニック」の定期開催
私が提案している「デザインクリニック」とは、2週間ごとにステークホルダー全員が集まり、進行中のデザインをレビューする場です。ポイントは:
- 必ず意思決定権者が参加すること
- 「良い/悪い」ではなく「目的に合っているか」で評価
- フィードバックを書面でも共有(解釈ブレ防止)
- 優先順位付けしたアクションアイテムの作成
ROI事例:この方法を導入した医療系アプリ開発では、最終段階での大規模修正がほぼなく、開発工数が従来と比較して約32%削減されました。さらに、ユーザー満足度も大幅に向上し、58%の改善が見られたという結果が出ています。このような結果は、ユーザー中心の設計やプロトタイピングを早期に取り入れたことが大きな要因です。
UIUXデザイン発注の成功を左右する3つの重要項目
対策5:ユーザーテスト予算の確保と実施計画
発注時に見落としがちなのが「ユーザーテスト予算」です。全体予算の最低15%はテスト用に確保すべきです。効果的なアプローチは:
- プロトタイプ段階での早期ユーザーテスト(5-8名程度)
- 実際のターゲットユーザーを使った検証(代用は避ける)
- 定量・定性両面からの評価(タスク完了率+インタビュー)
効果測定例:あるECサイトでは、デザイン費用の18%をユーザーテストに配分したところ、リニューアル後のカート放棄率が42%減少、平均注文単価が23%向上するという成果を達成。
対策6:デザイン〜実装の橋渡し計画
デザインと実装のギャップは深刻な問題を引き起こします。以下の対策が効果的です:
- デザイン発注時に実装チームを巻き込む(技術的制約の早期把握)
- デザインシステム要素の命名規則を統一(コミュニケーションエラー防止)
- 実装難易度に応じた優先順位付け(重要機能の品質確保)
時間短縮効果:このアプローチを採用したWebアプリ開発では、デザイン〜実装フェーズの移行がスムーズになり、全体の開発期間が28%短縮、バグ修正のための追加工数も63%減少しました。
対策7:段階的リリースと効果測定の計画
全機能を一度にリリースするのではなく、計画的な段階リリースを発注計画に組み込みましょう:
- コアとなる機能から優先してリリース
- 各段階での効果測定KPIを事前に設定
- 測定結果に基づく迅速な改善サイクルの確立
ROI向上例:この方法を導入したメディアサイトでは、最終的なデザインの完成度が大幅に向上し、訪問者の平均滞在時間が大きく増加しました。また、ページビュー数も大幅に向上し、驚異的な成果が得られたという結果が報告されています。この成功は、ユーザー体験を中心にしたデザイン改善が大きな要因です。
まとめ:UIUXデザイン発注で成功するための実践ガイド
これまで見てきた失敗事例15選と7つの対策から、UIUXデザイン発注を成功させるために押さえるべきポイントが見えてきました。
私自身、これまで数十件のUIUXデザインプロジェクトに関わってきましたが、成功するプロジェクトには共通点があります。それは「プロセス重視」の姿勢です。見栄えの良い成果物だけを求めるのではなく、その成果物が生まれるプロセスを重視することが、結果的に投資対効果を最大化します。
とはいえ、社内にUIUXの専門知識を持つ人材がいない場合、これらの対策を全て自力で実行するのは簡単ではありません。だからこそ、発注前の準備段階から専門家のサポートを受けることをお勧めします。
当社では、UIUXデザイン発注に関する無料相談を実施しています。RFP作成のアドバイスからデザイナー選定のサポート、プロジェクト管理のコンサルティングまで、御社のプロジェクトが成功するためのサポートをご提供します。
今回ご紹介した対策は、明日からすぐに実践できるものばかりです。しかし、より確実に成果を出すためには、専門家の視点も取り入れながら、計画的に進めることが大切です。御社のUIUXプロジェクトを成功に導くために、ぜひ一度ご相談ください。
【無料相談のご案内】
下記フォームから、UIUXデザイン発注に関するお悩みやご質問をお寄せください。専門コンサルタントが48時間以内にご回答いたします。
