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その施策、誰に届けたいですか? “絵に描いた餅”で終わらないペルソナの作り方

「今回のターゲットは20代女性です」「BtoBの部長クラスを狙います」…皆さんのチームでは、こんな会話がありませんか?しかし、その一言だけで、メンバー全員が同じ人物を思い描けているでしょうか。結果、Aさんは「流行に敏感な若者」を、Bさんは「堅実な若手社員」を想像し、出来上がったサービスや広告は、誰の心にも深く刺さらない…。これは、プロジェクトの現場で本当によくある失敗です。
この「チームの目線のズレ」を解消し、一貫した意思決定を可能にする強力なツールがペルソナです。そして、顧客を深く理解し、顧客中心の文化を持つ企業は、そうでない企業に比べて収益性が60%も高いというデータもあります。(出典: Deloitte)
しかし、ただペルソナを作れば良いわけではありません。多くのペルソナが、素敵な資料にまとめられたまま誰にも使われない「絵に描いた餅」になってしまう悲しい現実があります。この記事では、そうならないための、成果に直結するリアルなペルソナの作り方を、その全ステップから作成後の「運用法」まで、プロの視点で徹底的に解説します。
UI/UXの全体像をあわせて理解すると、改善の効果がさらに高まります。【図解】UIUXとは何か?初心者が知っておくべき基本知識 がその第一歩として役立つでしょう。
なぜ今、ペルソナが必要なのか? ターゲットとの決定的な違い

まず、基本からおさえましょう。ペルソナとは、「サービスや商品の典型的なユーザー像を、具体的な人物として詳細に設定したもの」です。単なる「ターゲット」という“属性の集まり”とは、似ているようで全く異なります。
❌ ターゲット
「30代、男性、東京都在住、年収600万円」といった、広範な属性データ。輪郭がぼやけており、チーム内で人物像がブレやすい。
✅ ペルソナ
「田中健太、32歳。渋谷のIT企業で働くPM。最近チームの生産性に悩み、新しいツールを探しているが、導入の手間を懸念している…」といった、顔が見えるレベルの具体的な人物像。チームの誰もが「田中さんならどう思うか?」と考えられる。
なぜ、この「顔が見える」ことが重要なのでしょうか。それは、ペルソナがチームの意思決定の“羅針盤”になるからです。「田中さんのような多忙なPMなら、この機能は複雑すぎる」「彼が情報収集に使うのはこのメディアだから、広告を出すならここだ」というように、全ての判断がユーザー起点で行われるようになります。これこそが、ユーザー中心設計の第一歩なのです。
ステップ1:情報収集|「想像」を「事実」に変える最も重要な工程
ペルソナの作り方で最もよくある失敗は、情報収集を怠り、関係者の「願望」や「想像」で人物像を作り上げてしまうことです。ペルソナの質は、この情報収集の質で9割決まると言っても過言ではありません。「それってあなたの感想ですよね?」と指摘されない、根拠のあるペルソナを作るための情報源は、主にこの2つです。
1. 定性データ(ユーザーの「声」を知る)
なぜそう思うのか、どう感じるのか、といった深いインサイトを得るための情報。
- ユーザーインタビュー: 最も重要。ユーザーの生の声を聞き、言葉の裏にある価値観や課題を深掘りします。成功させるインタビューの具体的なコツはこちらの記事で詳しく解説しています。
- 営業・CS担当者へのヒアリング: 顧客と日々接している彼らは、ユーザーの不満や喜びの一次情報の宝庫です。
2. 定量データ(ユーザーの「行動」を知る)
実際の行動パターンを数字で把握するための情報。
- Google Analyticsなどのアクセス解析: サイト内のユーザーの動きや、流入経路、よく見られているページなどを把握します。
- 顧客データ(CRM/SFA): 購買履歴や頻度、顧客の属性データなどを分析します。
重要なのは、定性と定量の両方のデータを組み合わせ、人物像を立体的にしていくことです。データで行動の事実を掴み、インタビューでその背景にある感情や動機を理解する。この往復運動が、リアルなペルソナを生み出します。
ステップ2:情報分析と作成|ペルソナに魂を吹き込む

集めた情報を、いよいよ具体的なペルソナシートに落とし込んでいきます。ここでのポイントは、情報をただ書き写すのではなく、意味のあるグループを見つけ出し、ストーリーとして組み立てることです。
情報のグループ化とペルソナの骨子作成
インタビューの記録やアンケート結果を付箋などに書き出し、似たような意見や行動をグループ化していきます(親和図法)。すると、「ツール導入の決裁権を持っているが、現場の意見を重視する」「新しい情報を常に探しているが、信頼できるソースを求めている」といった、いくつかの特徴的なユーザーパターンが見えてくるはずです。これがペルソナの骨子となります。
BtoBペルソナの項目例とテンプレート
ペルソナに含めるべき項目は様々ですが、特にBtoBの場合は、個人の情報だけでなく、その人が組織で果たす役割を含めることが重要です。以下に、私たちが実際に使っている項目例をベースにしたテンプレートをご紹介します。
| カテゴリ | 項目例 |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名、年齢、顔写真、役職、会社概要(業種、規模) |
| 背景 | キャリア、学歴、家族構成、ライフスタイル |
| 性格・価値観 | 性格(内向的/外向的など)、大切にしていること、モチベーションの源泉 |
| 業務上の役割 | 担当業務、責任範囲、KPIや目標、所属部署での立場 |
| 課題・不満 | 現在抱えている業務上の課題、フラストレーション、悩んでいること |
| 情報収集 | どのように情報を集めるか(Web、展示会など)、信頼するメディア、意思決定に影響を与える人 |
| ゴール | その製品・サービスを使って、最終的に何を達成したいのか |
| 名言 | その人の価値観を象徴するような一言 |
ステップ3:ペルソナを“育て続ける”|「絵に描いた餅」にしないための運用術
おめでとうございます!これでペルソナが完成しました。…と、多くの解説記事はここで終わりますが、本当の勝負はここからです。作ったペルソナを、どうやってチームの共通認識にし、日々の意思決定に活かし、そして陳腐化させずに育てていくのか。これこそが、競合と差がつく最も重要なノウハウです。
チームへの浸透:ペルソナお披露目会を開こう
完成したペルソナは、PDFで共有して終わり、では絶対にダメです。関係者全員を集めた「ペルソナお披露目会」を開きましょう。ペルソナの名前を呼び、「田中さんは、こう考えているんです」と、まるで実在の人物を紹介するように語ります。彼の課題やゴールをチーム全員で共有することで、ペルソナは初めて「自分ごと」になります。
日々の業務への活用
- 会議での口癖にする: 「この機能、田中さん(ペルソナ名)は本当に喜ぶかな?」
- デスクに貼る: 常にペルソナを意識できるよう、印刷して全員が見える場所に貼り出します。
定期的なメンテナンス
市場やユーザーは常に変化します。半年に一度、あるいは大きな市場の変化があった際には、ペルソナが現状と乖離していないかを見直しましょう。追加のインタビューや最新のデータを元に、ペルソナのプロフィールを更新していく。このメンテナンスこそが、ペルソナを「生き続ける」ツールにする秘訣です。
ペルソナがUIを動かす!picks designの実践事例
「ペルソナがUIデザインにまで影響するって、本当?」はい、本当です。優れたペルソナは、デザイナーの主観的な「センス」を、客観的な「最適解」へと導く強力なガイドラインになります。
【事例】ある建設業界向けサービス企業:職人ペルソナが導き出した「神UI」の裏側
私たちが手掛けた、ある建設業界向けサービス企業の事例では、『一人親方、30代、現場の合間にスマホで情報収集』という、非常に解像度の高いペルソナを設定しました。このペルソナの課題や行動特性は、サイトのUIデザインにおける全ての意思決定の基準となりました。
- ペルソナのインサイト: 「とにかく時間がない。細かい文字を読むのは面倒」
→ UIへの反映: 専門用語を徹底的に排除した、分かりやすいコピーライティング。タップしやすい大きなボタンデザイン。 - ペルソナのインサイト: 「PCは使わない。信頼できる情報が欲しい」
→ UIへの反映: スマートフォンファーストのレイアウト。お客様の声や導入事例への分かりやすい導線設計。
このように、ペルソナの解像度が高ければ高いほど、デザインの細部にまで神が宿り、ユーザーにとって本当に「使いやすい」サービスが生まれるのです。
まとめ:優れたペルソナは、チームを一つにする最強のツールである
ペルソナの作り方、そして「絵に描いた餅」にしないための運用法まで解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
結局のところ、ペルソナとは、
「私たちの顧客は、誰なのか?」という、ビジネスの根源的な問いに対する、チーム全員の共通認識そのものです。
この共通認識がなければ、どれだけ優秀なメンバーが集まっても、船は前に進みません。もし、あなたのチームが「向かうべき方向が分からない」「施策の精度が上がらない」といった課題を抱えているなら、その原因は、顧客の顔が見えていないことにあるのかもしれません。ペルソナ作成は、その状況を打破する大きな突破口になります。
もし「自分たちだけでは、質の高いペルソナは作れそうにない」「専門家の客観的な視点が欲しい」と感じたら、ぜひ私たちにご相談ください。picks designでは、お客様のビジネスに合わせた最適なペルソナ設計を支援します。







