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UI改善、何から始めればいい?よくある悩みと「確信」に変わる第一歩

「UI改善、やらなきゃな…」そう感じつつも、「一体、何から手をつければいいんだ?」と、真っ白な地図の前で立ち尽くしているような感覚。プロダクトマネージャーや事業責任者、デザイナーの皆さんとお話ししていると、本当によくこんな声を聞きます。
- ●課題1:どこが悪いのか、勘頼り。 「ユーザーの離脱率が高いのは分かってる。でも、どの画面の、どのボタンが真犯人なのか特定できない…」
- ●課題2:改善案が、降ってこない。 「問題点はなんとなく分かっても、それをどうUIに落とし込んで良くすればいいのか、アイデアが枯渇してる。」
- ●課題3:改善の効果を、うまく説明できない。 「UIを良くしても、それが事業の売上やKPIにどう貢献したのか、経営陣に『なんとなく』でしか説明できない。」
正直に言うと、昔の私もそうでした。これらの悩みは、UI改善という航海に「羅針盤」がないために起こる典型的なつまずきです。感覚だけでUIを変えるのは、羅針盤なしで大海原に漕ぎ出すようなもの。無事に目的地に着くかは、ほぼ運任せです。だからこそ、私たちプロは「フレームワーク」という羅針盤を使います。これは机上の空論ではありません。この記事では、私たちが数々の修羅場をくぐり抜け、実際にクライアントワークで成果を出してきた、血の通ったフレームワーク活用法をご紹介します。読み終える頃には、あなたのUI改善プロジェクトは、不安な航海から「確信に満ちた冒険」に変わっているはずです。
UI改善プロジェクトの全体地図|フェーズ別フレームワーク一覧
UI改善を成功させる秘訣は、やみくもにツールを使うのではなく、プロジェクトの「現在地」に最適なフレームワークを戦略的に使い分けることです。まずは、UI改善の全工程を「現状把握」「課題分析」「施策立案」「効果検証」の4つのフェーズに分け、それぞれで強力な武器となるフレームワークを一覧で見てみましょう。いわば、プロジェクトの全体像を掴むための「世界地図」ですね。
| フェーズ | フレームワーク | 目的 |
|---|---|---|
| 現状把握 | カスタマージャーニーマップ | ユーザーの行動・感情・思考を時系列で可視化し、体験全体の課題を発見する |
| ヒートマップ分析 | ユーザーの実際の画面上の動きを可視化し、UI上の具体的な問題点を特定する | |
| 課題分析 | HEARTフレームワーク | ユーザー体験を5つの指標で評価し、「何を改善すべきか」の方向性を定める |
| LIFTモデル | CVR向上の観点からUI要素を6つの視点で評価し、改善のボトルネックを洗い出す | |
| 施策立案 | ダブルダイヤモンド | 発散と収束を繰り返す思考プロセスで、本質的な課題に対する最適な解決策を導き出す |
| AARRRモデル | ユーザー獲得から収益化までの5段階でボトルネックを特定し、改善施策を考える | |
| 効果検証 | A/Bテスト | 改善施策(仮説)が本当に効果があったのかをデータで客観的に証明する |
この表は、これから始まる冒険の地図です。でも、本当に価値があるのは「どのフレームワークを、いつ、どうやって使うのか?」という航海術。ここからは、私自身の失敗談も交えながら、それぞれのフレームワークをどう使いこなすか、深く掘り下げていきます。
フェーズ1:現状把握|ユーザーの「心の声」と「実際の行動」を掴む
カスタマージャーニーマップ:ユーザーの感情にダイブする
UI改善のスタート地点で最も重要なこと。それは「ユーザーを、自分以上に知る」ことです。そのために最強のツールがカスタマージャーニーマップ。ユーザーがサービスと出会い、心を動かされ、最終的にファンになる(あるいは離れていく)までの一連のストーリーを可視化する手法です。
多くのチームが、ユーザーの行動(例:ログイン→検索→購入)は追えていても、その瞬間の「感情」や「思考」までは見えていません。「この説明文、専門用語ばっかりで不安…」「購入後の画面が素っ気なくて、ちゃんと買えたか心配になった」――こうした小さな感情の揺れこそが、離脱や解約の真の原因。ここに改善のヒントがゴロゴロ転がっています。
ヒートマップ分析:ユーザーの「無言の行動」をあぶり出す
感情のストーリーが見えたら、次は具体的な行動をヒートマップ分析で裏付けを取ります。ヒートマップは、ユーザーが「どこをクリックしたか」「どこまで読んだか」をサーモグラフィのように見せてくれる魔法のようなツールです。以前、あるECサイトの改善で、私たちが「絶対にクリックされるはず!」と自信満々で設置したメインバナーが、ヒートマップで見ると全く触られていなかったことがありました。代わりに、ページのずっと下にある小さなテキストリンクにクリックが集中していたんです。「え、ここ見てるの!?」とチーム全員で驚きました。この「想定外の行動」こそ、ユーザーの無言の叫び。カスタマージャーニーマップと組み合わせることで、「ユーザーは派手な広告より、詳細なスペック比較を求めていたんだ」という仮説が生まれ、UI改善に直結しました。
フェーズ2:課題分析|「良いUI」を「儲かるUI」に変えるフレームワーク
ユーザーの課題が見えてきたら、次はその課題をどうビジネス成果に繋げるか。ここで、LIFTモデルとHEARTフレームワークが羅針盤の精度をグッと高めてくれます。
LIFTモデル:CVRを上げるための6つのエンジン
LIFTモデルは、コンバージョン率(CVR)を改善するための6つの要素を評価するフレームワークです。「価値提案」を最大化し、「不安」や「注意散漫」といった抵抗を最小化することが目的。これが優れているのは、UIデザインという「手段」が、なぜCVR向上という「結果」に繋がるのかを、デザイナーでない人にも論理的に説明できる点です。「このボタンの色を変えるのは、6つの要素のうち『明確性』を高め、ユーザーの迷いをなくすためです」と説明できれば、もう「なんとなく」の改善案とは言わせません。
HEARTフレームワーク:ユーザー体験と事業KPIの架け橋
Googleが提唱するHEARTフレームワークは、抽象的な「ユーザー体験」を、具体的な事業KPIと接続するための最強の翻訳機です。
| 指標 | 意味 | 関連KPI例 |
|---|---|---|
| Happiness(幸福度) | ユーザーの主観的な満足度 | NPS、CSAT、アプリストア評価 |
| Engagement(熱中度) | 利用頻度・深さ・没入度 | 訪問回数、滞在時間、主要機能の利用率 |
| Adoption(利用開始) | 新規ユーザーの獲得と定着 | 新規登録数、機能の初回利用率 |
| Retention(継続利用) | ユーザーが使い続けてくれるか | 継続率、リピート率、解約率 |
| Task Success(タスク成功) | タスクの完了率と効率性 | 購入完了率、検索成功率、エラー発生率 |
このフレームワークの真価は、ビジネスの目標から逆算して、改善すべきUIを特定できる点にあります。例えば、弊社がご支援したキャリアSNSでは、「Engagement(熱中度)」を最重要指標に設定しました。ただUIを綺麗にするのではなく、「ユーザー同士の偶発的な出会いや交流をいかに増やすか」という北極星に向かって施策を集中投下した結果、主要KPIを1.5倍に向上させることに成功しました。これは、フレームワークがビジネスを動かすエンジンになる、最高の事例です。
UI改善あるある失敗談|なぜあなたのチームは前に進めないのか?

フレームワークは万能薬ではありません。むしろ、使い方を間違えると「やった感」だけが残り、何も生み出さない劇薬にもなり得ます。ここでは、私が現場で見てきた、よくある3つの「フレームワーク沼」とその脱出方法をお伝えします。
失敗談1:「地図を作って満足」症候群
症状: ものすごく綺麗なカスタマージャーニーマップを作り上げ、「これで課題が見えた!」とチーム全員で満足。しかし、その地図を眺めるだけで、次の一歩(=具体的な改善アクション)が全く出てこない。
処方箋: フレームワークは「ゴール」ではなく「スタートの号砲」です。分析で得た気づきは、必ず「誰が」「いつまでに」「何をする」という具体的なタスクに変換しましょう。「分析ミーティングの最後は、必ずTodoリストで締める」というルールが効果的です。
失敗談2:「うちの宗派は〇〇教」シンドローム
症状:「うちはHEARTフレームワークでやってるから」と、一つのフレームワークに固執するあまり、目の前の課題に合わない分析を続けてしまう。まるで、どんな病気にも同じ薬を処方しているような状態。
処方箋: プロジェクトは生き物です。課題発見フェーズでは「カスタマージャーニーマップ」、施策評価フェーズでは「A/Bテスト」のように、状況に応じて最適な道具を選ぶ柔軟性が不可欠。フレームワークの「つまみ食い」を恐れないでください。
失敗談3:「結局“俺のUI”が最強」会議
症状: フレームワークで分析したにも関わらず、最終的な意思決定の場で「こっちのデザインの方がイケてる」「もっと派手にしよう」といった、声の大きい人の主観的な意見に流されてしまう。
処方箋: フレームワークは、主観のぶつかり合いを避けるための「共通言語」です。「そのUI変更は、HEARTでいうどの指標に、どう貢献するんですか?」と問いかける文化を作りましょう。これにより、議論がデータとロジックに基づいた建設的なものになります。
フェーズ3&4:施策立案と効果検証|地図を手に、宝を探し当てる実践法
では、実際に複数のフレームワークをどう組み合わせ、改善サイクルを回していくのか。ここでは「ECサイトのカゴ落ち率を改善する」というミッションを例に、具体的な思考プロセスを見ていきましょう。
- 1課題の発見(現状把握): まずはヒートマップ分析で、購入プロセスのどこでユーザーが離脱しているかを確認。さらに、離脱したユーザー数名にインタビューを行い、簡易的なカスタマージャーニーマップを作成。「送料が思ったより高くて萎えた」「決済方法が少なくてやめた」といった感情的なボトルネックを発見します。
- 2目標設定(課題分析): 次にHEARTフレームワークの出番です。今回の課題は「Task Success(タスク成功)」の低下が問題だと定義。「購入完了率を次の四半期で5%改善する」という、具体的で測定可能な目標を設定します。
- 3施策の立案(仮説構築): 目標達成のため、LIFTモデルを使って仮説を立てます。「決済ページに『送料無料まであと〇〇円』と表示すれば、『価値提案』が上がり離脱が減るのでは?」「Amazon Payを導入すれば、『不安』が減りカゴ落ちが改善するのでは?」といった、具体的なUI改善アイデアを複数出します。
- 4効果の検証(答え合わせ): 最後に、立案した仮説が正しかったかをA/Bテストで検証します。元のデザインと改善案デザインをユーザーにランダムで表示し、どちらが本当に「購入完了率」を改善したかをデータで証明します。
このように、フレームワークを点ではなく線で、さらには円(サイクル)で捉えることで、勘や経験だけに頼らない、再現性の高いUI改善プロセスが実現できます。
「失敗しないUIUXデザイン会社5選と選定ノウハウ」では、こうした改善サイクルを支援できるパートナー選びの観点について解説していきます。
まとめ|UI改善は「羅針盤」と「航海術」の組み合わせ

この記事では、UI改善という終わりのない冒険を成功に導くための、主要なフレームワーク(羅針盤)と、それを使いこなすための実践的なプロセス(航海術)を解説してきました。
UI改善は、一部の天才デザイナーのセンスやひらめきに頼るものではありません。優れたフレームワークは、誰でも正しい方向に進むための強力なガイドになります。しかし、最も重要なのは、その羅針盤を手に、実際に泥臭く航海(プロジェクト)をやり遂げることです。私たちpicks designが自信を持ってこのノウハウをお伝えできるのは、ただフレームワークを「知っている」だけでなく、数々のクライアントと共に実際に「やってきた」からです。
「自社に合った改善の進め方がわからない」
「フレームワークを導入してみたけど、どうも成果に繋がらない」
もし、そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちに声をかけてください。あなたのビジネスという船に最適な羅針盤と航海術を、一緒に見つけ出すパートナーになります。







