製造現場のモバイルUI設計|失敗事例から学ぶ、成功するアプリの条件

  • 2025.7.27
  • デザイン

そのシステム、現場で本当に使われていますか?

「鳴り物入りで導入した新しい生産管理アプリ、結局Excelに戻っちゃった…」

製造業のDX推進担当者の方から、そんな悲しい声を伺うことが少なくありません。良かれと思って導入したはずのモバイルアプリが、いつの間にか現場で使われなくなり、ホコリをかぶっている。笑い話のようですが、これって日本の製造現場で本当に“あるある”な光景なんですよね。

でも、もし「優れたUI設計への1ドルの投資が、100ドルのリターンを生む」と言われたら、どうでしょう?これは決して大げさな話ではなく、米国の調査会社Forrester Researchが報告しているデータです(出典: Forrester Research, “The Six Steps For Justifying A Usability Investment”)。つまり、使いやすいモバイルUIは、ただの「お飾り」ではなく、会社の利益に直結する強力な経営ツールになり得るということ。

この記事では、なぜ多くの現場用モバイルアプリが失敗に終わるのか、そのリアルな「失敗事例」を解き明かし、そこから見えてくる「成功の条件」を徹底的に解説していきます。もう「作っただけ」のDXで終わらせないために、現場で本当に愛されるモバイルUI設計の秘訣を、一緒に探っていきましょう。

なぜ?よくあるモバイルUI設計、3つの「失敗のワナ」

「神アプリのつもりが、誰も使わない塩漬けアプリに…」なんて事態は、なぜ起きてしまうのでしょうか。私たちが多くのご相談を受ける中で見えてきた、典型的な失敗パターンが3つあります。あなたの会社は、このワナにハマっていませんか?

ワナ1:機能てんこ盛り「幕の内弁当」シンドローム

「あれもこれも」と現場の要望をすべて詰め込んだ結果、どこに何があるか分からない複雑怪奇なアプリが完成。これが最も多い失敗です。良かれと思って機能を詰め込むほど、現場の作業員は「覚えるのが面倒」「操作が遅くなる」と感じ、使うのをやめてしまいます。多機能は、必ずしも現場の幸せに繋がりません。

ワナ2:現場を知らない「エリート設計」の悲劇

開発会議は、スーツを着た役員やIT部門の担当者ばかり。実際に油のついた手袋でスマホを操作する作業員の姿はそこにはありません。結果、見た目は綺麗でも「手袋だとボタンが押しにくい」「屋外だと画面が見えない」といった、現場のリアルからかけ離れたアプリが生まれてしまうのです。

ワナ3:見た目だけ刷新「なんちゃってDX」

古い基幹システムの見た目だけをモダンなデザインに変えたパターン。中身の業務フローやデータの持ち方は昔のままなので、根本的な使いにくさは何一つ解決していません。これはDXとは呼べず、単なる「ガワ替え」。現場からは「前の方がマシだった」なんて声が上がることも…。

失敗から学ぶ!現場が喜ぶモバイルUI、成功の絶対条件

失敗事例をただ嘆くだけでは前に進めません。重要なのは、その裏返しから成功の法則を学ぶこと。数々のプロジェクトを見てきた私たちが確信する、現場で本当に「使える」モバイルUI設計の絶対条件は、驚くほどシンプルです。

✅ 条件1:「思考停止」で使える、究極のシンプルさ

優れたUIは、ユーザーに一切の思考を強要しません。マニュアルを読まなくても、見た瞬間に次に行うべき操作が直感的に分かる。これが大原則です。特に、一刻を争う製造現場では、操作に迷う時間は1秒たりとも許されません。ボタンの配置、色、言葉遣い、そのすべてを「誰がどういう状況で使うのか」を突き詰めて設計する必要があります。

✅ 条件2:人間工学に基づいた「うっかり防止」設計

人間は必ずミスをします。この前提に立つのがプロの設計です。例えば、数量の入力ミスを防ぐために、過去の履歴から数値をサジェストしたり、あり得ない桁数を入力したらアラートを出したり。重要な操作の前には必ず確認ダイアログを挟むなど、ユーザーがミスしたくてもできない仕組みをUIに組み込むことが、品質と安全性を守ります。

✅ 条件3:現場が「育てられる」柔軟性と拡張性

完璧なシステムなんて存在しません。導入後に現場から上がってくる「もっとこうしてほしい」という声こそが、システムを真に価値あるものへと進化させる宝です。簡単に項目を追加できたり、業務フローの変更に柔軟に対応できたりする設計思想が、長く愛されるシステムには不可欠。現場と一緒に成長していく。そんな視点が求められます。

【データで証明】なぜ「使いやすいUI」は儲かるのか?

「UI改善が大事なのは分かったけど、それで本当に会社の利益になるの?」

経営層や上司を説得する際、必ずこの壁にぶつかりますよね。ここで役立つのが、客観的なデータです。感情論ではなく、数字で語りましょう。

前述の「ROI 9900%」という話、これはUI/UX改善がもたらす多面的な効果を掛け合わせることで実現します。具体的には、以下の好循環が生まれるからです。

UI/UX改善による直接効果波及効果(コスト削減・生産性向上)
① 操作時間の短縮人件費の削減、生産量の向上
② 操作ミスの削減手戻り工数の削減、不良品率の低下、原材料ロスの削減
③ 教育コストの削減新人や応援スタッフが即戦力化、トレーナーの工数削減
④ ストレス軽減従業員満足度(ES)の向上、離職率の低下、採用・再教育コストの削減

見ての通り、単に「使いやすくなった」というレベルの話ではないのです。ある工場では、作業記録をモバイルアプリ化したことで事務作業時間が60%も削減されたというデータもあります。その浮いた時間で、本来やるべき品質改善や設備保全に取り組めるわけですから、生産性が上がるのは当然の結果と言えるでしょう。製造現場のモバイルUI設計は、コストセンターではなく、プロフィットセンターへの投資なのです。

【実践編】シーン別!モバイルUI設計のOK/NGポイント

では、具体的にどのようなUIが良いのでしょうか。製造現場の代表的な業務シーンを例に、ありがちなNG例と、私たちが提案するOK例を比較してみましょう。

シーン1:部材の発注・出庫

❌ NG例:

  • 小さなテキストボックスに品番を手入力させる。→入力ミスや品番の覚え間違いが多発。

⭕️ OK例:

  • バーコードリーダーでの読み取りを基本とし、過去の発注履歴をリストから選択できるようにする。頻繁に使うものは「お気に入り」登録できる。

特に、多くの製造現場で課題となる「発注業務」のモバイルアプリ化については、失敗しないための具体的なUI/UXの秘訣をこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

シーン2:品質検査の記録

❌ NG例:

  • 検査項目が長いリストで並んでおり、スクロールが大変。数値もすべて手入力。→記録漏れや入力ミスが発生。

⭕️ OK例:

  • 検査対象の写真を撮り、問題箇所を直接タップして記録できるようにする。「OK/NG」は大きなボタンでワンタップ。数値はテンキーを最適化し、異常値はリアルタイムで警告色に変わる。

シーン3:設備の日次点検

❌ NG例:

  • すべての点検項目を毎回ゼロからチェックさせる。→形骸化し、「やったふり」が横行。

⭕️ OK例:

  • 「前回値」をデフォルトで表示し、変更があった箇所だけを更新する差分入力方式を採用。異常を発見した際は、その場で写真とメモを残し、即座に関係部署へ通知が飛ぶようにする。

【事例】「入力ミス80%削減」を実現した、私たちの挑戦

ここで少し、私たちの実例をお話しさせてください。

以前、ある部品メーカーのイナミコーポレーション様から「現場の発注システムでの入力ミスが多発していて困っている」というご相談を受けました。お話を伺うと、まさに先ほどのNG例のオンパレード。品番も数量もすべて手入力で、ベテラン作業員の記憶力に頼りきっている状態でした。

私たちはまず、徹底的に現場を観察しました。作業員の方々がどのように動き、どのタイミングで、どんな体勢でモバイルを操作するのか。そこで見えてきたのは、「手袋をしている」「薄暗い場所で見る」「急いでいる」といった、会議室では決して分からないリアルな利用シーンでした。

この観察結果を元に、私たちが設計した新しいUIのポイントは3つです。

  1. 1.バーコード読み取りをメインにし、手入力を原則禁止に。
  2. 2.過去の発注履歴から「いつものやつ」をワンタップで再発注できる機能。
  3. 3.手入力が必要な場合でも、数量の桁を間違えたら即座にアラートが出る仕組み。

結果は劇的でした。導入後、発注時の入力ミスは80%以上も削減され、現場の作業員の方からも「本当に楽になった」と最高の言葉をいただくことができました。これは、小手先のデザイン変更ではなく、現場の課題と徹底的に向き合う「人間中心設計」のアプローチだからこそ成し得た成果だと、私たちは自負しています。

picks designの最新の製造業関連の実績はこちら

「作れる会社」と「使えるUIを設計できる会社」の見極め方

さて、ここまで読んで「よし、うちも専門家に相談しよう!」と思ったあなた。最後に一つ、非常に重要なことをお伝えします。それは、開発パートナー選びの視点です。

世の中には、システムを「作れる」会社は星の数ほどあります。しかし、現場で本当に「使える」UI/UXを設計できる会社は、そう多くはありません。その違いはどこにあるのでしょうか?

見極めるための簡単なチェックリストを用意しました。ぜひ、パートナー候補の会社に問いかけてみてください。

  • 彼らは、あなたの会社の「現場」を見たがりますか?(会議室だけで完結しようとする会社は要注意)
  • 彼らの実績に、具体的な「導入後の成果(数値)」はありますか?(「作りました」だけでは不十分)
  • 彼らは、プロトタイプ(試作品)を使ったテストを提案してくれますか?(いきなり開発に進むのはリスクが高い)
  • 彼らのチームに、「デザイナー」だけでなく「UI/UXリサーチャー」はいますか?(専門性の証明)
  • 彼らは、「納品して終わり」ではなく、導入後の改善運用まで提案してくれますか?

開発会社選びのより詳細なチェックリストや費用感については、こちらのガイドが役立ちます。

まとめ:はじめの一歩は「現場の声」に耳を傾けること

今回は、製造現場におけるモバイルUI設計の失敗と成功について、かなり踏み込んでお話ししてきました。結局のところ、成功の秘訣はたった一つに集約されるのかもしれません。

それは、
「現場の作業員を、心からリスペクトすること」です。

彼ら・彼女らが日々どんなことに悩み、何に不便を感じているのか。その「声なき声」に耳を傾け、テクノロジーとデザインの力でどう解決できるかを考える。すべての出発点はそこにあるはずです。

この記事が、あなたの会社のDXを成功させるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。もし、「自社の課題をどこから整理すればいいか分からない」「専門家の客観的な意見がほしい」と感じたら、いつでもお気軽にご相談ください。UI/UXデザインの専門家として、課題整理の壁打ちから喜んでお手伝いさせていただきます。

>>picks designのUI/UXデザインサービス詳細を見る

無料相談
  • 2025.7.27
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そのシステム、現場で本当に使われていますか?

「鳴り物入りで導入した新しい生産管理アプリ、結局Excelに戻っちゃった…」

製造業のDX推進担当者の方から、そんな悲しい声を伺うことが少なくありません。良かれと思って導入したはずのモバイルアプリが、いつの間にか現場で使われなくなり、ホコリをかぶっている。笑い話のようですが、これって日本の製造現場で本当に“あるある”な光景なんですよね。

でも、もし「優れたUI設計への1ドルの投資が、100ドルのリターンを生む」と言われたら、どうでしょう?これは決して大げさな話ではなく、米国の調査会社Forrester Researchが報告しているデータです(出典: Forrester Research, “The Six Steps For Justifying A Usability Investment”)。つまり、使いやすいモバイルUIは、ただの「お飾り」ではなく、会社の利益に直結する強力な経営ツールになり得るということ。

この記事では、なぜ多くの現場用モバイルアプリが失敗に終わるのか、そのリアルな「失敗事例」を解き明かし、そこから見えてくる「成功の条件」を徹底的に解説していきます。もう「作っただけ」のDXで終わらせないために、現場で本当に愛されるモバイルUI設計の秘訣を、一緒に探っていきましょう。

なぜ?よくあるモバイルUI設計、3つの「失敗のワナ」

「神アプリのつもりが、誰も使わない塩漬けアプリに…」なんて事態は、なぜ起きてしまうのでしょうか。私たちが多くのご相談を受ける中で見えてきた、典型的な失敗パターンが3つあります。あなたの会社は、このワナにハマっていませんか?

ワナ1:機能てんこ盛り「幕の内弁当」シンドローム

「あれもこれも」と現場の要望をすべて詰め込んだ結果、どこに何があるか分からない複雑怪奇なアプリが完成。これが最も多い失敗です。良かれと思って機能を詰め込むほど、現場の作業員は「覚えるのが面倒」「操作が遅くなる」と感じ、使うのをやめてしまいます。多機能は、必ずしも現場の幸せに繋がりません。

ワナ2:現場を知らない「エリート設計」の悲劇

開発会議は、スーツを着た役員やIT部門の担当者ばかり。実際に油のついた手袋でスマホを操作する作業員の姿はそこにはありません。結果、見た目は綺麗でも「手袋だとボタンが押しにくい」「屋外だと画面が見えない」といった、現場のリアルからかけ離れたアプリが生まれてしまうのです。

ワナ3:見た目だけ刷新「なんちゃってDX」

古い基幹システムの見た目だけをモダンなデザインに変えたパターン。中身の業務フローやデータの持ち方は昔のままなので、根本的な使いにくさは何一つ解決していません。これはDXとは呼べず、単なる「ガワ替え」。現場からは「前の方がマシだった」なんて声が上がることも…。

失敗から学ぶ!現場が喜ぶモバイルUI、成功の絶対条件

失敗事例をただ嘆くだけでは前に進めません。重要なのは、その裏返しから成功の法則を学ぶこと。数々のプロジェクトを見てきた私たちが確信する、現場で本当に「使える」モバイルUI設計の絶対条件は、驚くほどシンプルです。

✅ 条件1:「思考停止」で使える、究極のシンプルさ

優れたUIは、ユーザーに一切の思考を強要しません。マニュアルを読まなくても、見た瞬間に次に行うべき操作が直感的に分かる。これが大原則です。特に、一刻を争う製造現場では、操作に迷う時間は1秒たりとも許されません。ボタンの配置、色、言葉遣い、そのすべてを「誰がどういう状況で使うのか」を突き詰めて設計する必要があります。

✅ 条件2:人間工学に基づいた「うっかり防止」設計

人間は必ずミスをします。この前提に立つのがプロの設計です。例えば、数量の入力ミスを防ぐために、過去の履歴から数値をサジェストしたり、あり得ない桁数を入力したらアラートを出したり。重要な操作の前には必ず確認ダイアログを挟むなど、ユーザーがミスしたくてもできない仕組みをUIに組み込むことが、品質と安全性を守ります。

✅ 条件3:現場が「育てられる」柔軟性と拡張性

完璧なシステムなんて存在しません。導入後に現場から上がってくる「もっとこうしてほしい」という声こそが、システムを真に価値あるものへと進化させる宝です。簡単に項目を追加できたり、業務フローの変更に柔軟に対応できたりする設計思想が、長く愛されるシステムには不可欠。現場と一緒に成長していく。そんな視点が求められます。

【データで証明】なぜ「使いやすいUI」は儲かるのか?

「UI改善が大事なのは分かったけど、それで本当に会社の利益になるの?」

経営層や上司を説得する際、必ずこの壁にぶつかりますよね。ここで役立つのが、客観的なデータです。感情論ではなく、数字で語りましょう。

前述の「ROI 9900%」という話、これはUI/UX改善がもたらす多面的な効果を掛け合わせることで実現します。具体的には、以下の好循環が生まれるからです。

UI/UX改善による直接効果波及効果(コスト削減・生産性向上)
① 操作時間の短縮人件費の削減、生産量の向上
② 操作ミスの削減手戻り工数の削減、不良品率の低下、原材料ロスの削減
③ 教育コストの削減新人や応援スタッフが即戦力化、トレーナーの工数削減
④ ストレス軽減従業員満足度(ES)の向上、離職率の低下、採用・再教育コストの削減

見ての通り、単に「使いやすくなった」というレベルの話ではないのです。ある工場では、作業記録をモバイルアプリ化したことで事務作業時間が60%も削減されたというデータもあります。その浮いた時間で、本来やるべき品質改善や設備保全に取り組めるわけですから、生産性が上がるのは当然の結果と言えるでしょう。製造現場のモバイルUI設計は、コストセンターではなく、プロフィットセンターへの投資なのです。

【実践編】シーン別!モバイルUI設計のOK/NGポイント

では、具体的にどのようなUIが良いのでしょうか。製造現場の代表的な業務シーンを例に、ありがちなNG例と、私たちが提案するOK例を比較してみましょう。

シーン1:部材の発注・出庫

❌ NG例:

  • 小さなテキストボックスに品番を手入力させる。→入力ミスや品番の覚え間違いが多発。

⭕️ OK例:

  • バーコードリーダーでの読み取りを基本とし、過去の発注履歴をリストから選択できるようにする。頻繁に使うものは「お気に入り」登録できる。

特に、多くの製造現場で課題となる「発注業務」のモバイルアプリ化については、失敗しないための具体的なUI/UXの秘訣をこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

シーン2:品質検査の記録

❌ NG例:

  • 検査項目が長いリストで並んでおり、スクロールが大変。数値もすべて手入力。→記録漏れや入力ミスが発生。

⭕️ OK例:

  • 検査対象の写真を撮り、問題箇所を直接タップして記録できるようにする。「OK/NG」は大きなボタンでワンタップ。数値はテンキーを最適化し、異常値はリアルタイムで警告色に変わる。

シーン3:設備の日次点検

❌ NG例:

  • すべての点検項目を毎回ゼロからチェックさせる。→形骸化し、「やったふり」が横行。

⭕️ OK例:

  • 「前回値」をデフォルトで表示し、変更があった箇所だけを更新する差分入力方式を採用。異常を発見した際は、その場で写真とメモを残し、即座に関係部署へ通知が飛ぶようにする。

【事例】「入力ミス80%削減」を実現した、私たちの挑戦

ここで少し、私たちの実例をお話しさせてください。

以前、ある部品メーカーのイナミコーポレーション様から「現場の発注システムでの入力ミスが多発していて困っている」というご相談を受けました。お話を伺うと、まさに先ほどのNG例のオンパレード。品番も数量もすべて手入力で、ベテラン作業員の記憶力に頼りきっている状態でした。

私たちはまず、徹底的に現場を観察しました。作業員の方々がどのように動き、どのタイミングで、どんな体勢でモバイルを操作するのか。そこで見えてきたのは、「手袋をしている」「薄暗い場所で見る」「急いでいる」といった、会議室では決して分からないリアルな利用シーンでした。

この観察結果を元に、私たちが設計した新しいUIのポイントは3つです。

  1. 1.バーコード読み取りをメインにし、手入力を原則禁止に。
  2. 2.過去の発注履歴から「いつものやつ」をワンタップで再発注できる機能。
  3. 3.手入力が必要な場合でも、数量の桁を間違えたら即座にアラートが出る仕組み。

結果は劇的でした。導入後、発注時の入力ミスは80%以上も削減され、現場の作業員の方からも「本当に楽になった」と最高の言葉をいただくことができました。これは、小手先のデザイン変更ではなく、現場の課題と徹底的に向き合う「人間中心設計」のアプローチだからこそ成し得た成果だと、私たちは自負しています。

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「作れる会社」と「使えるUIを設計できる会社」の見極め方

さて、ここまで読んで「よし、うちも専門家に相談しよう!」と思ったあなた。最後に一つ、非常に重要なことをお伝えします。それは、開発パートナー選びの視点です。

世の中には、システムを「作れる」会社は星の数ほどあります。しかし、現場で本当に「使える」UI/UXを設計できる会社は、そう多くはありません。その違いはどこにあるのでしょうか?

見極めるための簡単なチェックリストを用意しました。ぜひ、パートナー候補の会社に問いかけてみてください。

  • 彼らは、あなたの会社の「現場」を見たがりますか?(会議室だけで完結しようとする会社は要注意)
  • 彼らの実績に、具体的な「導入後の成果(数値)」はありますか?(「作りました」だけでは不十分)
  • 彼らは、プロトタイプ(試作品)を使ったテストを提案してくれますか?(いきなり開発に進むのはリスクが高い)
  • 彼らのチームに、「デザイナー」だけでなく「UI/UXリサーチャー」はいますか?(専門性の証明)
  • 彼らは、「納品して終わり」ではなく、導入後の改善運用まで提案してくれますか?

開発会社選びのより詳細なチェックリストや費用感については、こちらのガイドが役立ちます。

まとめ:はじめの一歩は「現場の声」に耳を傾けること

今回は、製造現場におけるモバイルUI設計の失敗と成功について、かなり踏み込んでお話ししてきました。結局のところ、成功の秘訣はたった一つに集約されるのかもしれません。

それは、
「現場の作業員を、心からリスペクトすること」です。

彼ら・彼女らが日々どんなことに悩み、何に不便を感じているのか。その「声なき声」に耳を傾け、テクノロジーとデザインの力でどう解決できるかを考える。すべての出発点はそこにあるはずです。

この記事が、あなたの会社のDXを成功させるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。もし、「自社の課題をどこから整理すればいいか分からない」「専門家の客観的な意見がほしい」と感じたら、いつでもお気軽にご相談ください。UI/UXデザインの専門家として、課題整理の壁打ちから喜んでお手伝いさせていただきます。

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