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もう広告だけでは戦えない?アプリグロースの潮目が変わったワケ

「また広告予算の話か…」「CPA(顧客獲得単価)がどんどん上がって、もう限界…」。アプリのグロースを担当していると、こんな悩みが尽きませんよね。ぶっちゃけ、僕もかつてはそうでした。でも、気づいてしまったんです。ユーザー獲得と同じくらい、いや、それ以上に大切なことがあるってことに。クッキーレス時代が到来し、従来の広告手法が通用しにくくなる中、多くのアプリが「新規ユーザーは来るけど、すぐいなくなる」という“バケツに穴が空いた状態”に陥っています。
その穴を塞ぐ鍵こそが、プロダクト体験そのものなんです。これからのアプリグロースは、プロダクトがユーザーを惹きつけ、ファンにし、新たなユーザーを呼ぶ「プロダクトレッドグロース(PLG)」という考え方が主流になります。
PLG実践の最初の一歩には「優れたアプリ戦略|成功モデルを徹底解説」が参考になります。
この記事では、小手先のテクニックではなく、持続可能な成長サイクルを生み出すための本質的な戦略をお届けします。
全ての基本、AARRRモデルを「体験デザイン視点」で再インストールしよう

「AARRRモデルは知ってるよ」という方も、ちょっとだけお付き合いください。このフレームワークを、単なるマーケティング指標の羅列ではなく、「ユーザー体験のジャーニー」として捉え直すことが、PLG時代の第一歩です。下の表を見てみてください。従来のマーケティング施策と、僕たちが提唱する「UI/UXデザインの役割」を並べてみました。
| AARRRフェーズ | 読み方 | 主なKPI | UI/UXデザインの主な役割 |
|---|---|---|---|
| Acquisition | 獲得 | インストール数、流入数 | 分かりやすいストア情報、魅力的なLPデザイン |
| Activation | 活性化 | サインアップ率、オンボーディング完了率 | 価値を最短で体験させるUI、心地よい初回体験 |
| Retention | 継続 | 継続率(リテンションレート)、DAU/MAU | 習慣化を促す機能設計、飽きさせない情報提供 |
| Referral | 紹介 | 紹介数、バイラル係数 | シェアしたくなる機能・体験、簡単な紹介フロー |
| Revenue | 収益 | LTV、課金率、ARPU | ストレスのない決済フロー、価値を感じる課金設計 |
どうでしょう?広告でユーザーを「連れてくる」だけでなく、プロダクトの体験で「おもてなし」し、「また来たい」と思ってもらい、「友達を連れてきてもらう」。この一連の流れをデザインすることが、これからのアプリグロースの核心なんです。特にActivationとRetentionが、事業成長のボトルネックになっているケースが本当に多いんですよ。
数値目標を整理するなら「アプリKPI完全ガイド!成功のために知っておくべき指標とは?」をあわせてご覧ください。
【実践術①】最初の7秒で心を掴め!「アクティベーション」を最大化するオンボーディング術

ユーザーがアプリをインストールして最初に触れる「オンボーディング」。ここでの体験が、その後の継続率を大きく左右します。ぶっちゃけ、ここで「なんか面倒くさいな」「よく分からないな」と思われたら、二度とアプリは開かれません。まさに最初の7秒が勝負!
ありがちな失敗例:
- ✖ 機能説明のチュートリアルを延々と見せる
- ✖ いきなり大量の許可(プッシュ通知、位置情報など)を求める
- ✖ アカウント登録をしないと何もできない
これではユーザーはうんざりです。大切なのは「最速で、このアプリが提供する中核的な価値(アハ体験)を実感してもらう」こと。例えば、音楽アプリなら「いきなり好みの曲が流れる」、タスク管理アプリなら「1つタスクを登録したら、驚くほど簡単に整理される」といった体験です。僕たちがUI/UXデザインで重視するのは、ユーザーに何かを「させる」のではなく、自然に「やってみたくなる」流れを作ること。まずは、皆さんのアプリのオンボーディングが、ユーザーをワクワクさせるものになっているか、ぜひ見直してみてください。
【実践術②】「また使いたい」をデザインする。リテンションを高めるエンゲージメント施策
多くのプロダクトマネージャーが最も頭を悩ませるのが、この「リテンション(継続利用)」ではないでしょうか。せっかく獲得したユーザーが、数日後にはほとんど離脱してしまう…。この課題を解決する鍵は、ユーザーの「習慣」になることです。そのためには、ただ便利なだけでは不十分。「つい開いてしまう」仕掛けが必要です。
- プッシュ通知の最適化:
「新着情報があります!」のような一方的な通知ではなく、「〇〇さんがあなたの投稿に『いいね』しました」といった、自分ごと化できるパーソナルな通知は開封率が格段に上がります。 - 適切なタイミングでの情報提供:
ユーザーが最も情報を必要とする瞬間に、そっとヒントを提示する。例えば、ECアプリで商品をカートに入れたまま離脱したユーザーに、翌日「あの商品、まだ気になりませんか?」とリマインドするなど。 - タスク完了の快感:
ユーザーがアプリ内で何かを達成した時に、小さな成功体験(アニメーションや祝福メッセージなど)を用意する。この「気持ちよさ」が、次のアクションに繋がります。
これらは全て、UI/UXデザインの力で実現できること。ユーザーが離脱する原因をデータで分析し、使い続けたくなる体験をデザインすることで、アプリの継続率は着実に改善できます。
分析の基本から改善への活かし方は「アプリ分析手法完全ガイド」が役立ちます。
【実践術③】収益化は「ありがとう」の対価。LTVを最大化するレベニュー戦略
「収益化(Revenue)」というと、どうしてもマネタイズの仕組みや広告表示の最適化に目が行きがちです。もちろんそれも重要ですが、PLGの文脈で最も大切なのは「ユーザーが、価値を感じて喜んでお金を払ってくれる体験をいかに作るか」という視点です。
無理やり広告を見せたり、分かりにくい課金導線でユーザーを混乱させたりするのは最悪の体験。それはLTV(顧客生涯価値)を下げるだけでなく、アプリの評判そのものを毀損してしまいます。
僕たちが考えるべきは、
- 無料プランと有料プランの価値の差を明確にすること。 無料でも十分に価値を感じてもらった上で、「もっとこうだったらいいのに」という痒い所に手が届く機能を有料で提供する。
- 決済フローを徹底的にスムーズにすること。 購入を決意したユーザーを、入力フォームの多さやエラーで離脱させてはいけません。
- お金を払うことが「投資」だと感じられること。 例えば、学習アプリなら「この課金で自分の未来が変わる」、ビジネスツールなら「この機能で仕事がこれだけ効率化する」という期待感の醸成です。
優れたUI/UXは、ユーザーの満足度を高め、最終的にLTVという形でビジネスに大きく貢献するのです。
【事例】UI/UX改善が事業を動かす!様との取り組み
「理屈は分かったけど、本当にUI/UXでそんなに成果が出るの?」と思いますよね。そこで、僕たちpicks designがご支援した事例を少しだけご紹介します。
継続利用を高めたニュースアプリの改善
ある大手通信企業が運営するニュースアプリでは、「コンテンツは豊富なのに、ユーザーが使いこなせていない」という課題がありました。データ上はただの滞在時間の短さとして現れます。しかし、ユーザーインタビューを行うと、「新しい発見よりも、いつものニュースに早くたどり着きたい」という切実な声が聞こえてきました。
このインサイトに基づき、ナビゲーションを再設計し、利用頻度の高いカテゴリへの動線を最優先する情報アーキテクチャに変更。ユーザーの「いつもの」を尊重するデザインで、ストレスのない体験を実現しました。結果として、AARRRモデルにおけるRetention(継続)指標の改善に直結しました。
取引完了率を改善したフリマアプリの取り組み
ある大手自動車関連企業が提供するフリマアプリでは、取引プロセスが複雑でコンバージョン率が低いという課題がありました。ユーザーテストの結果、専門用語の多さや次のステップの不明確さが心理的な障壁となり、ユーザーが不安を感じて離脱していることが明らかになりました。
ステップを明確に可視化し、専門用語を平易な言葉に置き換えるUI改善を実施したことで、ユーザーは迷わず取引を完了できるようになり、CVR(取引完了率)という収益に直結する指標の大幅な向上に成功しました。
「それ実装は無理」を乗り越える。グロースを加速させるチームの作り方
アプリグロースの現場でよく聞くのが、「マーケターが考えた施策をエンジニアに頼んだら『それは実装コストが高い』と断られた」という話。これ、本当にもったいないですよね。PLGを実践するには、マーケター、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアが一枚岩の「グロースチーム」として機能することが不可欠です。
成功するチームのポイント:
- 共通のKPIを持つ:
部署ごとにバラバラの目標を追うのではなく、「今月はアクティベーション率を5%上げる」のように、チーム全員が同じ数字を追いかける。 - 仮説検証サイクルを高速で回す:
「このボタンの色を変えたらクリック率は上がるか?」といった小さな仮説を立て、素早く実装(A/Bテストなど)、データで効果を測定し、次のアクションに繋げる。このサイクルを週単位で回すのが理想です。 - 企画段階からエンジニア・デザイナーを巻き込む:
「こんなことやりたいんだけど、どうすれば実現できる?」と、アイデアの段階から相談することで、技術的な壁やデザイン上の課題を早期に発見し、より良い施策へと昇華させることができます。
グロースは誰か一人のヒーローが成し遂げるものではありません。多様な専門性を持ったメンバーが、同じ目標に向かって知恵を出し合う。そんな文化を作ることが、持続的な成長の最大の鍵なのです。
改善ステップを体系的に学ぶなら「UIUX改善で売上アップ!今すぐ実践すべき最強ステップガイド」もおすすめです。
まとめ:アプリグロース成功のために、まず「ユーザー」を見よう
ここまで、アプリグロースの新しい常識「プロダクトレッドグロース(PLG)」と、そのための実践術をお話してきました。最後に、この記事で最も伝えたかったことを、もう一度。
持続可能なアプリグロースの鍵は、プロダクトの外(広告)ではなく、中(体験)にあります。
明日から皆さんにぜひ試してほしいアクションは、以下の3つです。
- 自社のアプリを「初めて使うユーザー」になりきって操作してみる。
オンボーディングで迷う点はないか?価値がすぐに分かるか?をチェックしてみてください。 - ユーザーレビューや問い合わせに目を通す。
ユーザーがどこでつまずき、何を求めているのか、宝の山がそこにはあります。 - チームの誰かと「ユーザー体験」について30分話す。
エンジニアでも、デザイナーでも、CSでも構いません。違う視点から見ることで、きっと新しい発見があるはずです。
もし、「データ分析はしているけど、具体的な改善策に繋がらない」「ユーザー体験のどこから手をつければいいか分からない」といったお悩みがあれば、ぜひ一度、私たちにご相談ください。







