今さら聞けないアプリリテンションとは?初心者でも分かる仕組みと重要性

  • 2025.8.26
  • LTVUI/UXグロースハック
  • デザイン

なぜかユーザーが定着しない…それ、「リテンション」が原因かも?

「広告費をかけてユーザーを集めても、気づいたら誰も残っていない…」
「ダウンロード数は伸びるのに、アクティブユーザーが全然増えない…」

アプリ担当者の皆さん、こんな風に頭を抱えていませんか?その悩み、めちゃくちゃ分かります。実はそれ、多くのアプリが直面する深刻な課題、「リテンション(ユーザーの定着率)」の問題なんです。

ユーザーを新規獲得するコストは、既存ユーザーを維持するコストの5倍かかると言われています(1:5の法則)。つまり、ユーザーが定着しないアプリは、まるで穴の空いたバケツで水を汲むようなもの。どれだけ広告費を投下しても、ザルから水が漏れるように利益が逃げていってしまうのです。

逆に言えば、リテンションを高めることは、アプリの成功に直結します。ユーザーが長く使い続けてくれれば、それは事業の安定、そして LTV(顧客生涯価値)の最大化 に繋がります。本記事では、小手先のテクニックではなく、ユーザーが「このアプリ、好きだな」と自然に感じ、使い続けてくれるための本質的なアプローチ、特にUI/UXデザインの観点から、その秘訣を余すところなくお伝えします。さあ、あなたのアプリを「選ばれ続けるアプリ」に変える旅を始めましょう!

成果を上げているアプリの裏側が気になる方は、『優れたアプリ戦略|成功モデルを徹底解説』をチェックしてみてください。

今さら聞けない「アプリリテンション」の基本のキ

「リテンションが大事なのは分かったけど、そもそも何なの?」という方のために、サクッと基本をおさらいしましょう。

アプリリテンションとは、アプリをインストールしたユーザーが、その後も継続して利用してくれる割合のこと。一般的には、インストール後の特定の日(1日後、7日後、30日後など)に再びアプリを起動したユーザーの割合を「リテンション率」として計測します。

計算式は至ってシンプルです。

リテンション率 (%) = (特定期間後に利用を継続しているユーザー数 ÷ 特定期間の開始時点のユーザー数) × 100

例えば、100人がアプリをインストールし、その7日後に30人が利用していたら、7日後リテンション率は30%となります。

業界やアプリのジャンルによって目安は異なりますが、一般的なモバイルアプリの翌日リテンション率は25%前後、30日後には数%にまで落ち込むことも珍しくありません。この数字を見て、「思ったより低い…」と感じた方も多いのではないでしょうか?

そう、何もしなければユーザーは驚くほど簡単に去っていくのです。だからこそ、DAU(デイリーアクティブユーザー)やMAU(マンスリーアクティブユーザー)といった指標をただ眺めるだけでなく、その裏側にある「なぜユーザーは使い続けてくれるのか(あるいは、くれないのか)」を深く考えることが、何よりも重要になるのです。

なぜあなたのアプリは使われなくなる?よくあるリテンション施策の落とし穴

リテンション改善に取り組もうとするとき、多くの人がまず「プッシュ通知」や「お得なキャンペーン」といった施策に飛びつきます。もちろん、それらが有効な場合もあります。でも、ちょっと待ってください。それ、本当にユーザーのためになっていますか?

ここでは、良かれと思ってやったのに、逆にユーザーを遠ざけてしまう「あるあるな失敗談」をいくつかご紹介します。

  • 失敗談1:しつこい「愛のメッセージ(プッシュ通知)」
    「お得な情報をお届け!」「最近アプリを開いていませんね?」…ユーザーのためを思ったつもりの通知が、いつしか「しつこい通知」に。結果、通知をオフにされ、最悪の場合アンインストール。心当たり、ありませんか?

  • 失敗談2:難解すぎる「初めまして(オンボーディング)」
    高機能なアプリほどやりがちですが、初回起動時に機能説明を詰め込みすぎて、ユーザーがうんざり。「なんだか難しそう…」と感じた瞬間、二度とアプリが開かれることはありません。

  • 失敗談3:どこにあるの?「宝探しゲーム(目的の機能)」
    ユーザーが使いたい機能が、どこにあるのか直感的に分からない。何度もタップして探し回るうちに、「もういいや!」と諦めてしまうケースです。

これらの失敗に共通するのは、「ユーザーの気持ちや文脈を無視した、企業側の一方的なコミュニケーション」になっている点です。ユーザーはあなたのアプリの「ファン」になる前に、ほんの少しのストレスで「さようなら」を選んでしまう、という厳しい現実を直視することから始めましょう。

【本丸】リテンションはUI/UXデザインで劇的に変わる!

では、どうすればユーザーはアプリを使い続けてくれるのでしょうか?その答えは、小手先の施策ではなく、もっと根本的な部分、すなわち 優れたUI/UXを設計するための基本原則 にあります。

UI/UXデザインと聞くと「見た目をオシャレにすること?」と思われがちですが、本質は全く違います。UI/UXデザインとは、ユーザーがアプリを使っている間に感じる「すべての体験」を設計することです。ストレスなく目的を達成できる快適さ、使うたびにちょっと嬉しくなるような心地よさ、そういったポジティブな感情の積み重ねこそが、リテンションの強力な土台となるのです。

考えてみてください。あなたが毎日使っているアプリは、きっと「操作が分かりやすい」「使っていて気持ちいい」「目的がスムーズに達成できる」といった特徴があるはずです。

「神は細部に宿る」と言いますが、アプリ体験もまさにそれ。例えば、

  • 気持ちのいいアニメーション(マイクロインタラクション): ボタンをタップした時の僅かな反応や、画面が切り替わる時のスムーズな動き。
  • 直感的な情報設計: ユーザーが次に何をすべきか、迷わせない画面構成。
  • ストレスフリーな入力フォーム: 面倒な入力を少しでも楽にする工夫。

こうした一つひとつの細やかな配慮が、ユーザーの無意識下に「このアプリは信頼できる」「使いやすい」という印象を刻み込みます。プッシュ通知やキャンペーンは、この「心地よい体験」という土台があってこそ、初めてその効果を最大限に発揮するのです。

明日からできる!リテンションを高めるUI/UX改善テクニック

「UI/UXが重要なのは分かったけど、具体的にどこから手をつければ…?」という声が聞こえてきそうです。ご安心ください。大規模なリニューアルだけでなく、比較的小さなコストで始められる改善もたくさんあります。ここでは、すぐに実践できる具体的なテクニックをいくつかご紹介します。

改善ポイントなぜ効果的か?(ユーザー心理)実践のヒント(低コストでできること)
オンボーディングの見直し「これなら自分にもできそう」という安心感と成功体験を与える。機能説明は3画面以内に。利点(ベネフィット)を先に伝え、チュートリアルはスキップ可能にする。
空白(ホワイトスペース)の活用視覚的な圧迫感を減らし、重要な情報に集中させる。「ごちゃごちゃしてない」と感じさせる。要素を詰め込みすぎず、余白を意識的に設ける。セクション間のマージンを少し広げてみる。
エラーメッセージの工夫「何が起きたか」「どうすればいいか」を優しく伝え、ユーザーの不安を取り除く。「エラーが発生しました」ではなく、「メールアドレスの形式が違うようです」のように具体的に記述する。
ローディング画面のUX向上ただ待たせるのではなく、進捗を示す、面白いアニメーションを見せるなどして体感時間を短縮する。スケルトンスクリーン(コンテンツの枠組みを先に見せる手法)を導入する。
タスク完了時のフィードバック「予約完了」「送信完了」などを明確に伝え、ユーザーに達成感と安心感を与える。チェックマークを表示したり、画面を軽く振動させたりする「マイクロインタラクション」を加える。

見ての通り、必ずしも莫大な開発コストがかかるものばかりではありません。「開発リソースが限られているから…」と諦める前に、まずはユーザーが最も頻繁に触れる画面や、離脱が多い画面から、こうした小さな改善を試してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、リテンション向上への大きな飛躍に繋がるはずです。

UI/UXだけじゃない!リテンションを高める「合わせ技」とデータ分析

ここまでUI/UXデザインの重要性を熱弁してきましたが、もちろんリテンション向上はそれだけで完結するわけではありません。優れたUI/UXという土台の上に、適切なコミュニケーション施策を組み合わせることで、相乗効果が生まれます。

  • パーソナライズされたプッシュ通知:
    全員に同じメッセージを送るのではなく、ユーザーの行動履歴や好みに合わせて「あなただけへのメッセージ」を送る。例えば、ECアプリなら「カートに入れた商品の値下げ通知」、ニュースアプリなら「興味のあるカテゴリの新着記事」など。
  • 効果的なアプリ内メッセージ:
    アプリを利用している最適なタイミングで、新機能や便利な使い方を案内する。ユーザーが操作に迷っている瞬間を狙ってヒントを出すなど、おもてなしの心で。
  • ユーザーを飽きさせないイベント:
    定期的に特別なキャンペーンやイベントを実施し、アプリを起動する「きっかけ」を提供する。ゲームアプリのイベントなどが良い例です。

そして、これらの施策が本当に効果的だったのかを検証するために不可欠なのが、データ分析です。ReproやAdjust、Firebaseといった分析ツールを導入し、施策実行前と後でリテンション率や特定の行動をとるユーザー数(コンバージョン率)がどう変化したかを必ず測定しましょう。

「仮説 → 実行 → 検証 → 改善」

このサイクル(PDCAサイクル)を回し続けること。UI/UXの改善も、その他の施策も、データという客観的な事実に基づいて行うことで、初めて「勘」や「思い込み」から脱却し、着実にリテンションを高めていくことができるのです。

【事例】「心地よい体験」でまた使いたくなる。picks designのUI/UX改善

理論は分かっても、実際のところどうなの?と思いますよね。ここで、私たち株式会社picks designが実際に手掛けた事例を少しだけご紹介させてください。

ある無人カフェスタンドのサービスでは、アプリでコーヒーを注文し、指定した時間に店舗で受け取れるという、非常にスマートな仕組みを提供していました。私たちは、このモバイルオーダーアプリのUI/UXデザインをご支援しました。

このプロジェクトで私たちが目指したのは、まさに「リテンションに繋がる心地よい体験」の創出です。

具体的には、

  • 注文プロセスの簡略化: ユーザーが数タップで迷うことなく注文を完了できる、直感的な情報設計。
  • 待ち時間のUXデザイン: コーヒーが出来上がるまでの待ち時間も、アニメーションなどで楽しく感じられる工夫。
  • 一貫したブランド体験: アプリから実際の受け取りまで、サービス全体で「root C」らしいスマートな世界観を感じられるデザイン。

といった点に注力しました。

結果として、ユーザーは初回利用で「なんてスムーズで便利な体験なんだ!」と感じ、それが「また使ってみよう」というリピート利用、つまりリテンションへと繋がっていきます。

このように、ユーザーがアプリを使い続けるかどうかは、一つひとつの操作の「気持ちよさ」や「分かりやすさ」の積み重ねで決まるのです。

まとめ:リテンション改善の第一歩は「ユーザーへの深い共感」から

ここまで、アプリリテンションの重要性から具体的な改善策まで、特にUI/UXデザインの観点から解説してきました。最後に、一番大切なことをお伝えします。

すべての施策の根底には「ユーザーへの深い共感」がなければならない、ということです。

あなたのアプリを使ってくれるユーザーは、どんな人で、どんな日常を送り、どんな時にあなたのアプリを必要としてくれるのでしょうか。その人を、まるで親しい友人のように具体的に想像してみてください。その友人をもてなすとしたら、どんな言葉をかけ、どんな手助けをしますか?

リテンション向上とは、テクニック論やツール論に終始するものではありません。ユーザー一人ひとりと真摯に向き合い、「どうすればもっと快適に、もっと楽しく使ってもらえるだろう?」と考え抜き、それをデザインやコミュニケーションに落とし込んでいく、地道で、しかし非常に創造的な活動なのです。

「ユーザーが定着せず、すぐに離脱してしまう」
「データはあるが、具体的なデザイン改善に繋げられない」
「どこから手をつければ良いかわからない」

もし、あなたがこのような課題を抱え、次の一歩を踏み出せずにいるのなら、ぜひ一度私たちにご相談ください。貴社のビジネスとユーザーを深く理解し、リテンション向上に繋がる最適なUI/UXデザインをご提案します。一緒に、ユーザーから永く愛されるアプリを育てていきましょう。

UI/UXデザインの相談はこちら

UIUXデザイン実績
  • 2025.8.26
  • LTVUI/UXグロースハック
  • デザイン

なぜかユーザーが定着しない…それ、「リテンション」が原因かも?

「広告費をかけてユーザーを集めても、気づいたら誰も残っていない…」
「ダウンロード数は伸びるのに、アクティブユーザーが全然増えない…」

アプリ担当者の皆さん、こんな風に頭を抱えていませんか?その悩み、めちゃくちゃ分かります。実はそれ、多くのアプリが直面する深刻な課題、「リテンション(ユーザーの定着率)」の問題なんです。

ユーザーを新規獲得するコストは、既存ユーザーを維持するコストの5倍かかると言われています(1:5の法則)。つまり、ユーザーが定着しないアプリは、まるで穴の空いたバケツで水を汲むようなもの。どれだけ広告費を投下しても、ザルから水が漏れるように利益が逃げていってしまうのです。

逆に言えば、リテンションを高めることは、アプリの成功に直結します。ユーザーが長く使い続けてくれれば、それは事業の安定、そして LTV(顧客生涯価値)の最大化 に繋がります。本記事では、小手先のテクニックではなく、ユーザーが「このアプリ、好きだな」と自然に感じ、使い続けてくれるための本質的なアプローチ、特にUI/UXデザインの観点から、その秘訣を余すところなくお伝えします。さあ、あなたのアプリを「選ばれ続けるアプリ」に変える旅を始めましょう!

成果を上げているアプリの裏側が気になる方は、『優れたアプリ戦略|成功モデルを徹底解説』をチェックしてみてください。

今さら聞けない「アプリリテンション」の基本のキ

「リテンションが大事なのは分かったけど、そもそも何なの?」という方のために、サクッと基本をおさらいしましょう。

アプリリテンションとは、アプリをインストールしたユーザーが、その後も継続して利用してくれる割合のこと。一般的には、インストール後の特定の日(1日後、7日後、30日後など)に再びアプリを起動したユーザーの割合を「リテンション率」として計測します。

計算式は至ってシンプルです。

リテンション率 (%) = (特定期間後に利用を継続しているユーザー数 ÷ 特定期間の開始時点のユーザー数) × 100

例えば、100人がアプリをインストールし、その7日後に30人が利用していたら、7日後リテンション率は30%となります。

業界やアプリのジャンルによって目安は異なりますが、一般的なモバイルアプリの翌日リテンション率は25%前後、30日後には数%にまで落ち込むことも珍しくありません。この数字を見て、「思ったより低い…」と感じた方も多いのではないでしょうか?

そう、何もしなければユーザーは驚くほど簡単に去っていくのです。だからこそ、DAU(デイリーアクティブユーザー)やMAU(マンスリーアクティブユーザー)といった指標をただ眺めるだけでなく、その裏側にある「なぜユーザーは使い続けてくれるのか(あるいは、くれないのか)」を深く考えることが、何よりも重要になるのです。

なぜあなたのアプリは使われなくなる?よくあるリテンション施策の落とし穴

リテンション改善に取り組もうとするとき、多くの人がまず「プッシュ通知」や「お得なキャンペーン」といった施策に飛びつきます。もちろん、それらが有効な場合もあります。でも、ちょっと待ってください。それ、本当にユーザーのためになっていますか?

ここでは、良かれと思ってやったのに、逆にユーザーを遠ざけてしまう「あるあるな失敗談」をいくつかご紹介します。

  • 失敗談1:しつこい「愛のメッセージ(プッシュ通知)」
    「お得な情報をお届け!」「最近アプリを開いていませんね?」…ユーザーのためを思ったつもりの通知が、いつしか「しつこい通知」に。結果、通知をオフにされ、最悪の場合アンインストール。心当たり、ありませんか?

  • 失敗談2:難解すぎる「初めまして(オンボーディング)」
    高機能なアプリほどやりがちですが、初回起動時に機能説明を詰め込みすぎて、ユーザーがうんざり。「なんだか難しそう…」と感じた瞬間、二度とアプリが開かれることはありません。

  • 失敗談3:どこにあるの?「宝探しゲーム(目的の機能)」
    ユーザーが使いたい機能が、どこにあるのか直感的に分からない。何度もタップして探し回るうちに、「もういいや!」と諦めてしまうケースです。

これらの失敗に共通するのは、「ユーザーの気持ちや文脈を無視した、企業側の一方的なコミュニケーション」になっている点です。ユーザーはあなたのアプリの「ファン」になる前に、ほんの少しのストレスで「さようなら」を選んでしまう、という厳しい現実を直視することから始めましょう。

【本丸】リテンションはUI/UXデザインで劇的に変わる!

では、どうすればユーザーはアプリを使い続けてくれるのでしょうか?その答えは、小手先の施策ではなく、もっと根本的な部分、すなわち 優れたUI/UXを設計するための基本原則 にあります。

UI/UXデザインと聞くと「見た目をオシャレにすること?」と思われがちですが、本質は全く違います。UI/UXデザインとは、ユーザーがアプリを使っている間に感じる「すべての体験」を設計することです。ストレスなく目的を達成できる快適さ、使うたびにちょっと嬉しくなるような心地よさ、そういったポジティブな感情の積み重ねこそが、リテンションの強力な土台となるのです。

考えてみてください。あなたが毎日使っているアプリは、きっと「操作が分かりやすい」「使っていて気持ちいい」「目的がスムーズに達成できる」といった特徴があるはずです。

「神は細部に宿る」と言いますが、アプリ体験もまさにそれ。例えば、

  • 気持ちのいいアニメーション(マイクロインタラクション): ボタンをタップした時の僅かな反応や、画面が切り替わる時のスムーズな動き。
  • 直感的な情報設計: ユーザーが次に何をすべきか、迷わせない画面構成。
  • ストレスフリーな入力フォーム: 面倒な入力を少しでも楽にする工夫。

こうした一つひとつの細やかな配慮が、ユーザーの無意識下に「このアプリは信頼できる」「使いやすい」という印象を刻み込みます。プッシュ通知やキャンペーンは、この「心地よい体験」という土台があってこそ、初めてその効果を最大限に発揮するのです。

明日からできる!リテンションを高めるUI/UX改善テクニック

「UI/UXが重要なのは分かったけど、具体的にどこから手をつければ…?」という声が聞こえてきそうです。ご安心ください。大規模なリニューアルだけでなく、比較的小さなコストで始められる改善もたくさんあります。ここでは、すぐに実践できる具体的なテクニックをいくつかご紹介します。

改善ポイントなぜ効果的か?(ユーザー心理)実践のヒント(低コストでできること)
オンボーディングの見直し「これなら自分にもできそう」という安心感と成功体験を与える。機能説明は3画面以内に。利点(ベネフィット)を先に伝え、チュートリアルはスキップ可能にする。
空白(ホワイトスペース)の活用視覚的な圧迫感を減らし、重要な情報に集中させる。「ごちゃごちゃしてない」と感じさせる。要素を詰め込みすぎず、余白を意識的に設ける。セクション間のマージンを少し広げてみる。
エラーメッセージの工夫「何が起きたか」「どうすればいいか」を優しく伝え、ユーザーの不安を取り除く。「エラーが発生しました」ではなく、「メールアドレスの形式が違うようです」のように具体的に記述する。
ローディング画面のUX向上ただ待たせるのではなく、進捗を示す、面白いアニメーションを見せるなどして体感時間を短縮する。スケルトンスクリーン(コンテンツの枠組みを先に見せる手法)を導入する。
タスク完了時のフィードバック「予約完了」「送信完了」などを明確に伝え、ユーザーに達成感と安心感を与える。チェックマークを表示したり、画面を軽く振動させたりする「マイクロインタラクション」を加える。

見ての通り、必ずしも莫大な開発コストがかかるものばかりではありません。「開発リソースが限られているから…」と諦める前に、まずはユーザーが最も頻繁に触れる画面や、離脱が多い画面から、こうした小さな改善を試してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、リテンション向上への大きな飛躍に繋がるはずです。

UI/UXだけじゃない!リテンションを高める「合わせ技」とデータ分析

ここまでUI/UXデザインの重要性を熱弁してきましたが、もちろんリテンション向上はそれだけで完結するわけではありません。優れたUI/UXという土台の上に、適切なコミュニケーション施策を組み合わせることで、相乗効果が生まれます。

  • パーソナライズされたプッシュ通知:
    全員に同じメッセージを送るのではなく、ユーザーの行動履歴や好みに合わせて「あなただけへのメッセージ」を送る。例えば、ECアプリなら「カートに入れた商品の値下げ通知」、ニュースアプリなら「興味のあるカテゴリの新着記事」など。
  • 効果的なアプリ内メッセージ:
    アプリを利用している最適なタイミングで、新機能や便利な使い方を案内する。ユーザーが操作に迷っている瞬間を狙ってヒントを出すなど、おもてなしの心で。
  • ユーザーを飽きさせないイベント:
    定期的に特別なキャンペーンやイベントを実施し、アプリを起動する「きっかけ」を提供する。ゲームアプリのイベントなどが良い例です。

そして、これらの施策が本当に効果的だったのかを検証するために不可欠なのが、データ分析です。ReproやAdjust、Firebaseといった分析ツールを導入し、施策実行前と後でリテンション率や特定の行動をとるユーザー数(コンバージョン率)がどう変化したかを必ず測定しましょう。

「仮説 → 実行 → 検証 → 改善」

このサイクル(PDCAサイクル)を回し続けること。UI/UXの改善も、その他の施策も、データという客観的な事実に基づいて行うことで、初めて「勘」や「思い込み」から脱却し、着実にリテンションを高めていくことができるのです。

【事例】「心地よい体験」でまた使いたくなる。picks designのUI/UX改善

理論は分かっても、実際のところどうなの?と思いますよね。ここで、私たち株式会社picks designが実際に手掛けた事例を少しだけご紹介させてください。

ある無人カフェスタンドのサービスでは、アプリでコーヒーを注文し、指定した時間に店舗で受け取れるという、非常にスマートな仕組みを提供していました。私たちは、このモバイルオーダーアプリのUI/UXデザインをご支援しました。

このプロジェクトで私たちが目指したのは、まさに「リテンションに繋がる心地よい体験」の創出です。

具体的には、

  • 注文プロセスの簡略化: ユーザーが数タップで迷うことなく注文を完了できる、直感的な情報設計。
  • 待ち時間のUXデザイン: コーヒーが出来上がるまでの待ち時間も、アニメーションなどで楽しく感じられる工夫。
  • 一貫したブランド体験: アプリから実際の受け取りまで、サービス全体で「root C」らしいスマートな世界観を感じられるデザイン。

といった点に注力しました。

結果として、ユーザーは初回利用で「なんてスムーズで便利な体験なんだ!」と感じ、それが「また使ってみよう」というリピート利用、つまりリテンションへと繋がっていきます。

このように、ユーザーがアプリを使い続けるかどうかは、一つひとつの操作の「気持ちよさ」や「分かりやすさ」の積み重ねで決まるのです。

まとめ:リテンション改善の第一歩は「ユーザーへの深い共感」から

ここまで、アプリリテンションの重要性から具体的な改善策まで、特にUI/UXデザインの観点から解説してきました。最後に、一番大切なことをお伝えします。

すべての施策の根底には「ユーザーへの深い共感」がなければならない、ということです。

あなたのアプリを使ってくれるユーザーは、どんな人で、どんな日常を送り、どんな時にあなたのアプリを必要としてくれるのでしょうか。その人を、まるで親しい友人のように具体的に想像してみてください。その友人をもてなすとしたら、どんな言葉をかけ、どんな手助けをしますか?

リテンション向上とは、テクニック論やツール論に終始するものではありません。ユーザー一人ひとりと真摯に向き合い、「どうすればもっと快適に、もっと楽しく使ってもらえるだろう?」と考え抜き、それをデザインやコミュニケーションに落とし込んでいく、地道で、しかし非常に創造的な活動なのです。

「ユーザーが定着せず、すぐに離脱してしまう」
「データはあるが、具体的なデザイン改善に繋げられない」
「どこから手をつければ良いかわからない」

もし、あなたがこのような課題を抱え、次の一歩を踏み出せずにいるのなら、ぜひ一度私たちにご相談ください。貴社のビジネスとユーザーを深く理解し、リテンション向上に繋がる最適なUI/UXデザインをご提案します。一緒に、ユーザーから永く愛されるアプリを育てていきましょう。

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