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あなたのデザイナー、デザインに費やす時間はたった26%という現実
「うちのデザイナー、最近パフォーマンスが落ちている気がする…」もしあなたがデザインマネージャーや経営者なら、一度はそう感じたことがあるかもしれません。でも、それは本当にデザイナー個人の問題なのでしょうか?
衝撃的なデータがあります。Adobe社の調査によると、デザイナーが本来の創造的な業務に費やせる時間は、業務全体のわずか26%だというのです。
じゃあ残りの74%は? ファイル探し、無駄な会議、コミュニケーションの齟齬、手戻り作業…。これらは私たちが「見えないコスト」と呼んでいるものです。
正直なところ、多くのデザイン組織は、個々の才能に依存した「属人的なアート集団」のままです。事業がスケールし、デザイナーが5人、10人と増えるにつれ、この「見えないコスト」は爆発的に増大します。この記事では、そんなカオスな状況から脱却し、デザインを事業成長のエンジンに変えるための「仕組み」、デザインOPS(DesignOps)について、理想論ではなく、明日から使える超具体的なロードマップを提示します。
デザインOPSとは?創造性を最大化する「攻め」の仕組み
「また新しい横文字か…」と思ったあなた、正解です(笑)。でも、これは単なるバズワードではありません。
デザインOPSをものすごく平たく言うと、「デザイナーが最高のパフォーマンスで創造的な仕事に集中できる環境を、戦略的に整える活動全般」のことです。それは、単なる効率化やコスト削減といった「守り」の発想ではありません。むしろ、デザインという武器のポテンシャルを120%引き出し、事業の成長を加速させるための「攻めの経営戦略」だと、私たちは考えています。
競合の記事では「人・プロセス・ツール」が大事だと解説されていますが、それだけでは「で、何から?」となってしまいますよね。そこで私たちが提唱したいのが、組織の成長フェーズに合わせた、現実的な導入ロードマップです。
【本邦初公開】現実的な導入ロードマップ「Crawl, Walk, Run」モデル
DesignOpsの導入は、いきなり専任チームを作って高価なツールを導入するような、大企業だけの話ではありません。むしろ、チームが小さい段階から始めることにこそ価値があります。私たちは、組織の成熟度に合わせた3段階のモデル「Crawl, Walk, Run」を提唱しています。
あなたのチームが今どの段階にいるか、確認してみてください。
| フェーズ | 目的 | 具体的なアクション例 | 対象チーム規模 |
|---|---|---|---|
| Crawl(這う) | 属人性の排除と基礎固め | ・ファイル命名規則の統一 ・定例レビュープロセスの標準化 ・コミュニケーションルールの策定 | 2〜5名 |
| Walk(歩く) | 品質の安定化と効率化 | ・デザインシステムの導入・運用 ・コラボレーションツールの統一 ・オンボーディング資料の整備 | 5〜15名 |
| Run(走る) | 成果の定量化と事業貢献 | ・専任担当者の設置 ・ROI/KPIの設計と効果測定 ・部門横断プロセスの最適化 | 15名以上 |
大事なのは、いきなり「Run」を目指さないこと。まずは地に足のついた「Crawl」フェーズから始めることが、失敗しないための絶対条件です。次のセクションから、各フェーズで具体的に何をすべきかを見ていきましょう。
Crawlフェーズ:「あのファイルどこ?」選手権からの脱却
デザイナーが2〜5名の小さなチーム。まさにここがデザインOPSの始めどきです。このフェーズの目的は、コストをかけずに「カオス」から抜け出し、チームで戦うための土台を作ること。信じられないかもしれませんが、これだけで生産性は劇的に変わります。
まずは「ファイル命名規則」を決めよう
「最新版_v3_fix_final(ほんと).fig」みたいなファイル、あなたのチームに眠っていませんか? ファイル名やフォルダ構成に統一ルールがないだけで、チームは毎日貴重な時間を「探す」ことに浪費します。今日、30分だけチームで時間をとって、シンプルなルールを決めてみてください。これこそが、デザインOPSの記念すべき第一歩です。
次に「レビュープロセス」を標準化する
「誰が」「いつ」「何を」レビューするのかが曖昧だと、無限の手戻り地獄が始まります。例えば、「週に一度、水曜日の午前中にFigmaのコメント機能で非同期レビューを行う」「レビュー依頼時は必ず目的と背景を記載する」といった簡単なルールを決めるだけ。これだけで、デザイナーは安心して制作に集中でき、レビューの質も向上します。まさに、コストゼロで始められる最高のプラクティスです。
Walkフェーズ:仕組みで「品質」と「速度」を両立させる
デザイナーが5名を超え、複数のプロジェクトが同時に動くようになると、「Crawl」フェーズの草の根活動だけでは限界が見えてきます。ここで必要になるのが、個人のスキルに依存せず、仕組みで品質と速度を担保するという考え方です。
デザインOPSの心臓部、「デザインシステム」を導入する
Walkフェーズの核となるのが、デザインシステムの導入です。これは、再利用可能なUIコンポーネントと、その利用ルールをまとめたもの。Figma社の調査では、デザインシステムを導入した組織は開発速度が平均41%も向上したというデータもあります。一度作れば、誰がデザインしても一定の品質が保たれ、デザイナーもエンジニアも車輪の再発明から解放されます。まさに、スケールするデザイン組織の経営基盤と言えるでしょう。
コラボレーションツールを統一する
チャットはSlack、デザインはFigma、タスク管理はJira…のように、チームの公式ツールを定め、その使い方を標準化しましょう。ツールがバラバラだと、情報もサイロ化し、連携が非効率になります。「このプロジェクトの要件、どこで議論したっけ?」という無駄な時間をなくし、高速なプロトタイピングのサイクルを回すためにも、ツールの統一は不可欠です。
Runフェーズ:デザインの価値を「数値」で証明する
チームが15名以上の規模になり、デザインが事業の根幹を担うようになると、いよいよ本格的なデザインOPSの出番です。このフェーズでは、専任の担当者(デザインプロデューサーやDesignOpsマネージャー)を置き、デザイン組織の貢献度を定量的に測定し、経営に報告することがミッションになります。
デザインOPSの成果を測るKPIとは?
「良いデザインができました」では、経営層には響きません。彼らが知りたいのは、それがビジネスにどう貢献したか、です。Runフェーズでは、以下のようなKPIを設定し、成果をトラッキングします。
- 市場投入までの時間(Time to Market)の短縮率: 新機能のアイデアが出てからリリースされるまでの時間がどれだけ縮まったか。
- 手戻り工数の削減率: デザインFIX後のエンジニアリングフェーズでの仕様変更や手戻りがどれだけ減ったか。
- デザイナーのオンボーディング期間: 新しいメンバーがチームにジョインしてから、一人で価値を出せるようになるまでの時間。
これらの数値を計測し、「デザインOPSへの投資が、事業スピードをこれだけ加速させました」と証明することが、デザイン組織の価値をさらに高めるのです。
事例:「助太刀」様の裏側にあった、見えない仕組みの価値
理論だけではイメージが湧きにくいですよね。実は、私たちが手掛けてきたプロジェクトの成功の裏には、必ずこのデザインOPSの思想が生きています。
例えば、私たちがご支援した株式会社助太刀様のサービスサイトリニューアル。これは大規模なプロジェクトで、複数のデザイナーが関わりました。もしここに明確なオペレーションがなければ、アウトプットのデザインはバラバラになり、コミュニケーションコストで開発は炎上していたでしょう。
しかし、私たちはプロジェクトの初期段階で、厳密なデザイン原則やコンポーネント管理のルールを定義しました。誰が作業しても品質がブレない「仕組み」を先に作ったのです。これはまさにデザインOPSの実践であり、プロジェクトを一貫した品質で、かつ円滑に進めるための鍵となりました。優れたアウトプットは、優れたオペレーションから生まれる。これは、私たちが数々のプロジェクトで得た確信です。
まとめ:あなたのチームの「見えないコスト」、放置しますか?
いかがでしたでしょうか。デザインOPSは、決して大企業のためだけの複雑な理論ではありません。むしろ、チームが小さい頃から意識し、「Crawl, Walk, Run」と育てていくべき、組織のOSなのです。
思い出してください。デザイナーがデザインに使える時間は、たったの26%。残りの74%に潜む「見えないコスト」を削減し、デザイナーを創造的な仕事に解放することこそ、デザイン組織の価値を最大化し、事業をスケールさせる唯一の道です。
もし、あなたの会社が「デザイナーは増えたのに、アウトプットの速度と質が上がらない」と感じているなら、その原因は個人のスキルではなく、チームの「仕組み」にあるのかもしれません。picks designでは、お客様のデザイン組織の成熟度に合わせ、現実的なDesignOpsの導入・改善をご支援します。まずは無料の組織診断から、お気軽にご相談ください。






