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その施策、顧客の心に届いていますか?

「マーケティング部は広告を、営業部は訪問を、開発部は新機能を…」あなたの会社では、各部署が顧客のために良かれと思って動いているはずなのに、なぜか成果が繋がらない、顧客満足度が上がらない、ということはありませんか?これは、チームが顧客の「点」の行動しか見ておらず、一連の「線」としての体験(ジャーニー)を共有できていない、非常によくある光景です。
驚くべきことに、優れた顧客体験(CX)を提供する企業は、そうでない企業に比べて収益成長率が5倍以上高いというデータがあります。(出典: Forrester Research)
この「優れた顧客体験」を設計するための最強の設計図こそが、カスタマージャーニーマップです。この記事では、単なるマップの作り方だけではなく、競合がほとんど語っていない「作成後に成果を出すための活用法」まで、UI/UXデザインのプロの視点から徹底的に解説します。
UI/UXの基本から理解したい方は、【図解】UIUXとは何か?初心者が知っておくべき基本知識 も参考になります。
カスタマージャーニーマップとは?「顧客の心の旅行記」である

カスタマージャーニーマップとは、一言でいえば「顧客の心の旅路を記録した旅行記」です。特定の顧客像(ペルソナ)が、商品を認知し、興味を持ち、購入し、最終的にファンになるまでの一連の体験を、時間軸に沿って可視化したものを指します。
このマップの目的は、各段階での顧客の「行動」「思考」「感情」を明らかにすることで、「どのタイミングで、どんな情報やサポートを提供すれば、顧客はもっとハッピーになるのか?」という改善のヒントを発見することにあります。
⚠️ 最重要:マップ作成の【大前提】
それは「主役となるペルソナが明確であること」。誰の旅を描くのかが決まっていなければ、地図は描けません。まだペルソナがいない、あるいは解像度が低い場合は、まずはこちらのペルソナの作り方から取り組むことを強く推奨します。優れたマップは、優れたペルソナからしか生まれないのです。
実践!カスタマージャーニーマップの作り方 4ステップ
「難しそう…」と感じるかもしれませんが、基本的な作り方はシンプルです。以下の4つのステップに沿って、チームで情報を整理していきましょう。
- 1 ペルソナとゴールの設定: 誰の、どのような状況におけるジャーニーを描くのかを定義します。(例:Webディレクターの田中さんが、初めて当社のサービスを導入するまで)
- 2 ステージとタッチポイントの洗い出し: ペルソナがゴールに至るまでの行動を大きな段階(ステージ)に分け、顧客と企業が接点を持つ場所(タッチポイント)を書き出します。(例:ステージ:認知、情報収集、比較検討… / タッチポイント:Web広告、ブログ記事、営業資料…)
- 3 行動・思考・感情の整理: 各ステージで、ペルソナが「何をし(行動)」「何を考え(思考)」「どう感じたか(感情)」を、インタビューなどで得た事実を基に埋めていきます。このユーザーインタビューで、いかに顧客の本音を引き出せるかがマップの質を左右します。
- 4 課題と改善機会の発見: 感情が特にネガティブになっている部分や、行動が止まっている部分に着目し、そこに潜む「課題」と「ビジネスチャンス」を洗い出します。
| ステージ | タッチポイント | 行動 | 思考 | 感情 | 課題・機会 |
|---|---|---|---|---|---|
| 比較検討 | サービスサイト | 導入事例ページを見る | 「本当に成果が出るのか?他社の声が聞きたい」 | 🤔 | もっと具体的な成果がわかる事例を見せられないか? |
マップ作成はスタートライン!「活用」して初めて価値が生まれる
多くの企業で、カスタマージャーニーマップが美しい壁紙や誰も見ない資料で終わってしまう悲劇が起きています。断言します。マップは、作ってからが本番です。 それはまるで、健康診断の結果をもとに、具体的な生活改善プランを立てるようなものです。結果を眺めているだけでは、何も変わりません。
活用ステップ1:課題の優先順位付け
マップから洗い出された課題は、無数にあるはずです。すべてに一度に取り組むのは不可能です。「効果の大きさ」と「実行のしやすさ」の2軸でマトリクスを作り、どの課題から着手すべきか、チームで合意形成しましょう。
活用ステップ2:アイデア創出ワークショップ
優先順位の高い課題に対して、「どうすれば解決できるか?」をチームでブレインストーミングします。ここでの主役は、マップに描かれたペルソナです。「田中さん(ペルソナ)が本当に喜ぶ解決策は何か?」という視点を全員で共有することで、アイデアの質が飛躍的に高まります。
活用ステップ3:施策への落とし込みとKPI設定
出てきたアイデアを、具体的な施策に落とし込み、担当者と期限、そして成功を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。マップは、部門間のサイロを破壊し、チーム全員が同じ目標に向かうための「共通言語」として機能するのです。
インサイトがUIを動かす!picks designの実践事例

「マップ上のインサイトが、本当にビジネス成果に繋がるの?」もちろんです。ここで、私たちが手掛けたプロジェクトで、カスタマージャーニーマップがどう活かされたかをご紹介します。
【事例】見えない「不安」を可視化し、信頼をデザインする
私たちが手掛けた企業様の事例では、ターゲットである「現場の職人さん」のカスタマージャーニーマップを作成しました。そこで明らかになったのが、「比較検討」ステージにおける強い不安でした。「本当にこのサービスは信頼できるのか?」「他の職人は使っているのか?」という、Webサイト上の情報だけでは解消しきれない感情の谷間があったのです。
このインサイトに基づき、私たちはWebサイトのUI/UX改善において、導入事例やお客様の声を最も目立つ場所に配置し、具体的な活用シーンを動画で見せるなどの施策を実施しました。これは、マップによって顧客の「見えない感情」を可視化できたからこそ生まれた最適解であり、結果としてコンバージョン率の向上に大きく貢献しました。
よくある失敗から学ぶ、カスタマージャーニーマップ成功の秘訣
最後に、私たちが現場で目にしてきた、マップ作成で陥りがちな3つの罠と、それを避けるための秘訣をお伝えします。
- 罠1:「想像」で描いてしまう: ユーザーへのインタビューやデータ分析を省略し、社内の思い込みだけでマップを作ってしまうケース。これはマップではなく、ただの「社内旅行の計画書」です。必ず事実に基づいて描きましよう。
- 罠2:「As-Is(現状)」だけで満足してしまう: 現状の課題を可視化するAs-Isマップは重要ですが、そこで止まっては改善に繋がりません。必ず「どうすれば顧客はもっと幸せになるか?」という「To-Be(理想)」のジャーニーを描き、目指すべきゴールをチームで共有することが重要です。
- 罠3:一度作って更新しない: マップは生き物です。市場や顧客は常に変化します。半年に一度は見直し、最新の状況に合わせてアップデートする仕組みを作りましょう。古い地図では、新しい大陸にはたどり着けません。
まとめ:顧客理解の解像度が、ビジネスの成否を分ける
カスタマージャーニーマップとは、単なるフレームワークではありません。それは、部門間の壁を越え、組織全体で「顧客」という一人の人間を深く理解し、対話するための強力なコミュニケーションツールです。
顧客の行動がますます複雑化する現代において、もはや「良い製品を作れば売れる」という考え方は通用しません。顧客一人ひとりの心の旅路に寄り添い、最高の体験を提供できる企業だけが、顧客から選ばれ、生き残ることができます。
もしあなたのチームが、「施策がバラバラで一貫性がない」「顧客の全体像が見えていない」と感じているなら、まずはその旅路を描くことから始めてみませんか?picks designでは、お客様の顧客理解を深めるためのカスタマージャーニーマップ作成を、ワークショップの設計から支援します。







