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そのDX、現場で本当に使われていますか?
「よし、うちもDXだ!」「タブレットを導入して業務効率を上げるぞ!」
意気揚々と最新のタブレットアプリを導入したものの、現場からは「使いにくい」「かえって時間がかかる」「結局、紙のほうが早い」なんて声が聞こえてきて、頭を抱えている工場長やDX担当者の方、いらっしゃいませんか?
こんにちは!私たちpicks designは、これまで数々の企業の「使いにくい」を「気持ちいい」に変えてきたUI/UXデザインの専門家集団です。実は、製造業のDX推進において、多くの方が見落としがちな、しかし最も重要な落とし穴が「タブレットアプリのUI(ユーザーインターフェース)」なんです。
どんなに高機能なシステムでも、それを使う「人」にとって直感的でなければ、宝の持ち腐れ。特に、手袋をしていたり、薄暗かったり、常に動き回っていたりと、製造現場にはオフィスとは全く異なる特殊な環境があります。この「現場のリアル」を無視したUIは、生産性を下げるだけでなく、思わぬミスや事故の原因にさえなりかねません。この記事では、なぜ多くの競合サイトが語りたがらない「製造現場の特殊性」にこそ、生産性向上のカギが隠されているのか、その核心に迫っていきます。
「とりあえずDX」の落とし穴。よくある残念なUIとその末路

タブレット導入で失敗するケースには、いくつかの共通パターンがあります。もしかしたら、皆さんの現場でも思い当たる節があるかもしれません。
| よくある残念なUIの例 | それが引き起こす悲劇 |
|---|---|
| PC画面をそのまま縮小したようなUI | ボタンが小さすぎて手袋で押せない。誤タップが頻発し、イライラが募る。 |
| 専門用語だらけのメニュー画面 | 新人や外国人作業員が操作を覚えられず、教育コストが増大。結局、一部の人しか使えない。 |
| とにかく情報量が多い画面 | 一度に多くの情報を詰め込みすぎ。本当に必要な情報が埋もれ、確認ミスを誘発する。 |
| 操作後の反応が分かりにくいUI | ボタンを押せたのか、データが保存されたのか分からず、何度も同じ操作を繰り返してしまう。 |
いかがでしょうか?これらはすべて、見た目のデザイン以前の「設計の問題」です。「美しいデザイン」と「現場で使えるデザイン」は全くの別物。製造現場のUIで求められるのは、華やかさではなく、誰がどんな状況で使っても、確実・迅速・安全に目的を達成できる実用性です。この視点が抜け落ちたままでは、せっかくの設備投資も水の泡。現場の士気は下がり、DXは「やらされ仕事」になってしまいます。では、どうすればこの負のスパイラルから抜け出せるのでしょうか?その答えが、次にご紹介する「7つの原則」にあります。
これが答えだ!製造現場の生産性を変えるUI設計『7つの原則』

では、いよいよ本題です。私たちが数々の製造現場の課題解決を通して導き出した、タブレットアプリUI設計の「7つの原則」をご紹介します。これらは、単なるデザインのテクニックではなく、現場で働く人々のことを第一に考え抜いた「人間中心」の思想に基づいています。
原則1:状況認識の原則
薄暗い場所でも、粉塵が舞っていても、画面はクリアに見えるか?手袋をしたままでも、確実に操作できるか?製造現場の過酷な環境を常に想定し、どんな状況下でも安定したパフォーマンスを発揮できるUIであることが大前提です。
原則2:操作性の原則
ボタンは押しやすいサイズと間隔か?タップした時に、振動や音、色の変化といった「押せた!」と分かるフィードバックはあるか?一つひとつの操作が、ストレスなく確実に完了できることが重要です。神は細部に宿ると言いますが、優れたUIもまさにそれ。ボタン一つの配置で、作業効率は天国と地獄ほど変わることもあるんです。
原則3:視認性の原則
画面を見た瞬間に、どこに何の情報があるか理解できるか?一画面に表示する情報量は適切か?コントラストやフォントサイズは、あらゆる年齢の作業員にとって見やすいか?多くの人が機能の多さを求めがちですが、実は「情報をいかに絞り、整理するか」が優れたUIの鍵だったりします。
まずは、この3つの基本原則が守られているか、ぜひ皆さんの現場のタブレットをチェックしてみてください。次のセクションでは、より製造現場に特化した、踏み込んだ原則を見ていきましょう。
ミスをゼロに近づける。現場を守るUI設計の神髄
基本的な原則を押さえた上で、次は製造現場の安全性と品質を担保するための、より高度な原則に進みます。ここが、一般的なアプリ開発との大きな違いであり、私たちの専門性が最も活きる領域です。
原則4:誤操作防止の原則
「出荷確定」や「データ削除」など、クリティカルな操作には「本当によろしいですか?」といった確認画面(ダイアログ)を設けるなど、意図しないミスを未然に防ぐ仕組みはありますか?いわゆる「ポカヨケ」の思想をUIに組み込むことで、ヒューマンエラーのリスクを劇的に下げることができます。
原則5:学習しやすさの原則
マニュアルを熟読しなくても、アイコンや色分けで直感的に次の操作が分かるか?ベテランの使う専門用語ではなく、誰もが理解できる平易な言葉で書かれているか?優れたUIは、最高のトレーニングツールにもなり得ます。新人教育の時間を短縮し、作業の属人化を防ぐことにも繋がるのです。
原則6:情報構造の原則
何百、何千とある部品リストの中から、目的の情報を3タップ以内で見つけ出せるか?業務の流れに沿った自然な画面遷移になっているか?この「情報の探しやすさ」は、UX(ユーザー体験)の根幹をなす要素であり、作業時間そのものに直結します。
原則7:拡張性の原則
将来、新しい機能やセンサーを追加することになっても、柔軟に対応できる設計になっているか?場当たり的な改修を繰り返すと、UIはどんどん複雑化し、使いにくくなっていきます。長期的な視点に立った、「育てるUI」の思想が不可欠です。これら7つの原則を羅針盤とすることで、あなたの会社のタブレットアプリは、現場の頼れる相棒へと生まれ変わるはずです。
なぜ「使えるUI」が生まれるのか?答えは『人間中心設計』プロセスにある

「7つの原則が重要なのは分かった。でも、どうすればそんなUIが作れるんだ?」
その答えは、私たちのデザインの根幹にある「人間中心設計(HCD: Human Centered Design)」というプロセスにあります。これは、机上の空論でデザインするのではなく、実際にシステムを使う「人間(現場の作業員)」をプロセスの中心に据え、徹底的に彼らを理解することから始めるアプローチです。
- 1. 【知る】現場リサーチ: 私たちはまず、現場に足を運びます。作業員の方々にインタビューし、彼らが何に困り、何にイライラしているのか、生の声に耳を傾けます。時には彼らの隣で一日中作業の流れを観察し、「なぜ、あの時メモを取ったのか?」「なぜ、あそこで首を傾げたのか?」といった、本人すら無意識の課題を掘り起こします。この「現場百遍」こそが、すべての出発点です。
- 2. 【作る】プロトタイピング: 次に、リサーチで得た発見をもとに、操作できる試作品(プロトタイプ)を素早く作ります。これは完璧なものである必要はありません。むしろ、「作っては壊し、作っては壊す」を繰り返すことで、アイデアを素早く形にし、課題を可視化することが目的です。
- 3. 【試す】ユーザーテスト: そして、そのプロトタイプを実際に現場の作業員の方々に触ってもらいます。「このボタン、分かりにくいですね」「もっとこうだったら楽なのに」といったフィードバックを真摯に受け止め、次の改善に繋げます。
UI改善はただの「お化粧」じゃない。生産性50%向上も夢じゃないワケ
「UIを良くすることが、本当にそんなに大きなインパクトがあるの?」と疑問に思うかもしれません。答えは、明確にYESです。UI/UXの改善は、単なる見た目のお化粧ではありません。企業の経営数値に直結する、極めて重要な投資なのです。
ある海外の調査では、適切に設計されたUIは、ユーザビリティの問題を解決することで生産性を最大50%向上させる可能性があると報告されています。なぜなら、優れたUIは複合的な効果を生み出すからです。
- ✔作業時間の短縮: 1回の操作で数秒短縮されるだけでも、1日、1ヶ月、1年と積み重なれば、膨大な工数削減に繋がります。
- ✔ミスの削減: 誤操作が減ることで、手戻り作業や不良品の発生率が低下。品質向上とコスト削減に直接貢献します。
- ✔教育コストの削減: 直感的なUIは、新人や応援スタッフへの教育時間を大幅に短縮します。誰でもすぐに即戦力になれる環境は、人手不足に悩む現場にとって大きな武器です。
- ✔従業員満足度の向上: 「使いにくい」という日々のストレスから解放されることで、従業員のモチベーションは向上します。「会社は現場のことを考えてくれている」という信頼感が生まれ、離職率の低下にも繋がるかもしれません。
このように、UI改善への投資は、単なる経費ではなく、生産性、品質、人材という企業の根幹を支える「未来への投資」なのです。一度、自社の現場で「使いにくさ」によって、どれだけの時間とコストが無駄になっているか、試算してみてはいかがでしょうか?きっと、想像以上の数字に驚くはずです。
さあ、はじめよう!自社のUIを見直すための第一歩
この記事を読んで、「うちの会社のタブレットも、もっと良くできるかもしれない」と感じていただけたなら幸いです。では、具体的に何から始めればよいのでしょうか?完璧を目指す必要はありません。まずは、小さな一歩を踏み出すことが大切です。
簡単セルフチェックリスト
まずは、現場の担当者と一緒に、今使っているシステムのUIを以下の観点でチェックしてみてください。
- ☐ 5秒以上操作に迷うことはないか?
- ☐ 手袋をした状態で、押し間違えることはないか?
- ☐ 3回以上タップしないと目的の画面にたどり着けない、ということはないか?
- ☐ 新人の頃、このシステムの操作で困ったことはなかったか?
- ☐ 「もっとこうだったら良いのに」と愚痴を言ったことはないか?
一つでもチェックがついたら、そこが改善のチャンスです。
パートナー選びの極意:「作れる会社」と「使えるを設計できる会社」
UI改善を本格的に進めるなら、専門家の力は不可欠です。ここで重要なのがパートナー選び。システムを「作れる」開発会社と、体験を「設計できる」UI/UXデザイン会社は、似ているようで専門性が全く異なります。
| 比較軸 | システム開発会社 | UI/UXデザイン会社(私たちはこちら!) |
|---|---|---|
| 強み | 機能の実装、データベース構築、インフラ | ユーザーリサーチ、課題発見、情報設計、プロトタイピング |
| 主な関心事 | 「何が」できるか(What) | 「なぜ」「どのように」使うか(Why, How) |
| 選ぶべき時 | 実現したい機能が明確に決まっている | 現場の課題から見直し、根本的に使いやすさを追求したい |
もちろん両者の連携は不可欠ですが、もし「現場の使いにくさ」が課題の根源にあるのなら、まずは私たちのようなUI/UXの専門家に相談してみることをお勧めします。表面的な機能改修ではなく、根本的な課題解決への最短ルートをご提案できるはずです。
まとめ:最高のUIは、現場で働く人への「最高の投資」である
今回は、製造業の生産性を劇的に向上させるためのタブレットアプリUI設計について、7つの原則から人間中心設計のプロセスまで、かなり踏み込んでお話ししてきました。
この記事のポイント
- ✓現場の特殊性を無視したUIはDXの最大の足かせになる。
- ✓UI設計には「状況認識」「操作性」「視認性」「誤操作防止」「学習しやすさ」「情報構造」「拡張性」という7つの原則がある。
- ✓優れたUIは、現場を深く知る「人間中心設計」のプロセスから生まれる。
- ✓UI改善は、生産性、品質、人材定着に繋がる極めてROIの高い「投資」である。
これからの製造業は、ますます人手不足が深刻化し、一人ひとりの生産性向上が企業の生命線を握ることになります。そんな時代だからこそ、現場で働くすべての人にとって「最高の道具」を提供することの価値は、計り知れません。
もし、あなたの会社が「使いにくいシステム」という見えないコストに悩まされているなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。「うちの現場は特殊だから…」と諦める必要はありません。その特殊な現場にこそ、宝の山が眠っているのですから。
picks designでは、専門のUI/UXデザイナーが貴社の課題をヒアリングさせていただく無料相談を実施しています。
一緒に、あなたの会社の生産性を変える「最高のUI」を見つけ出す旅を始めませんか?







