日本酒コンペ作品の制作プロセスを大公開

  • 2022.12.1
  • グラフィックデザインパッケージデザイン
  • デザイン

プロセス公開ブログ

2022年11月に開催された名鉄商店の日本酒ラベルデザインのコンペに参加しました。

デザイン発案〜完成、大賞に選ばれるまでのプロセスをまとめました。

ぜひ最後までご覧くささい。

名鉄商店コンペとは?

2022年12月1日に名鉄が“新たなスタイルのお土産屋さん”プロジェクトとしてオープンする「名鉄商店」。

https://www.meitetsu-shouten.jp/

コンセプトは「地域を食べる、地域をアゲる、地域へ還す。」

商品はすべてオリジナルとし、沿線事業者と協業して開発したものを取り扱い、地域の魅力・価値に目を向け、人々に生活や街を楽しんでもらうきっかけを提供することを目指す。

そんな「名鉄商店」開業に向けたコンペ企画“日本酒ラベルデザイン”に参加しました。

概要について(HPより抜粋)

「愛知県、岐阜県にたくさんの酒蔵があることを若い人に知ってもらいたい。日本酒を気軽に楽しみ、好きになってほしい。」との思いから、愛知・岐阜の10の酒蔵にご協力いただき、アウトドアに特化した「ポケットに入る日本酒」を名鉄商店で販売します。

これにあたって、商品のラベルに使用するデザインを募集します。選ばれたデザインは実際に商品ラベルとなって店頭に並びます。また、ラベルには受賞デザイナーのお名前・クレジットを表記します。

「各酒蔵の名称、立地および商品名から連想する現代的、未来的なデザイン。かつ30年後の日本酒の基本デザイン」をイメージして、横70mm×縦60mmでデザインを作成。

プロセス公開ブログ2

 

 

デザインの方向性を決める

まず10の酒蔵からどの酒蔵のラベルを作るかを決めるためにそれぞれのホームページをチェックし

愛知県の知多にある原田酒造さんの「衣が浦若水」にすることに。

原田酒造さんの特徴↓

1855年創業という歴史ある酒蔵さん。知多半島の気候と豊かな河川のお水を生かし、昔ながらの手造りな手法を受け継ぎ作られているそう。原田酒造さんの現行のラベルを見ると筆で名称を力強く書いた日本酒のラベルらしいデザインが多く、イメージをガラリと変えることができたらと思いこちらの酒造さんを選ばせていただきました。

各酒蔵の名称、立地および商品名から連想する

衣が浦若水と聞いて、第一印象としては、若い、水というワードから、爽やかな緑や青といったイメージが浮かびました。

プロセス公開ブログ3プロセス公開ブログ3

 

次に原田酒造さんのHPより、

蔵から望む小さな湾の“衣が浦”から【衣が浦若水】の商品名が生まれたこと、

知多半島丘陵に生育した米(若水)を原料とした、米の旨みを生かした純米酒であること

酒造りに適した知多半島の中心部の河川の伏流水を使用していること

を知り、湾・米・水というワードからも最初にイメージした緑、青(プラスもう一色アクセントを入れるかも?)という配色でいこうと決めました。

ここでモダンなデザインやトレンド、日本酒のラベルが実際にどんなものが使われているのか調査もしました。

プロセス公開ブログ4

デザインをしていく

色味とタイポグラフィの方向性が決まり、この要素をどのようにデザインしていこうと考えたときに、ふと日本酒の味わいとはどんなものなんだろうと思いました。

日本酒を実際に楽しんでいる方のレビューサイトを見てみると

※実際に参考にしたサイト→https://www.saketime.jp/

  • 爽やかな上立香で色味はなく、口当たり程よい甘さに随分としっかりと感じる味わいがあり芳醇、米感ある旨みが強く苦味もしっかりと強めで味わい深い。
  • 口に含むとおっと身構えてしまうザ日本酒系の酸味のかけら。でも言うほど広がらず、嫌味になりきらないギリギリ許せる範囲に着地。そしてそのアクセント以外は雑味なく小綺麗。

などワインのソムリエが語るような、味、口当たり、余韻、風味、香りなど様々な要素、観点から日本酒を楽しんでいることを知りました。

ここから混ざりあい、味の移り変わり、風味という抽象的な具合をグラデーションで表現しようと考えました。

そこで最初に作ったグラデーションがこちら。

 

プロセス公開ブログ5

 

3色を少しずつ散りばめて配色して混ざり合っている様子を表現しました。

が、引いてみるとブツブツしたように見えて不自然なのと、色の混ざり合っている部分が濁ってしまっているのでもっとシンプルなグラデーションにしたほうがよいとアドバイスをいただき、下記のようなグラデーションに変更しました。

プロセス公開ブログ6

 

3つの色が綺麗に混ざり合い上品さもプラスされて良い感じに。

ピンクは日本酒の柔らかな甘味や未来感を表現したくアクセントで入れてみましたが、最初にイメージした「湾・水・米」を表現するには、ピンクではなく、湾=青、水=水色、米=緑(稲色)の方が爽やかに表現できると考え下記に変更しました。

プロセス公開ブログ7

とても爽やかな瑞々しい綺麗な印象のグラデーションになりました。

文字のグラフィックについて

ここに文字を入れていきます。

まずシンプルに丸ゴシック系の文字を入れてみました。

プロセス公開ブログ8

なんかイマイチパッとしません・・・。

ここでテーマである現代的・未来的なデザインについて考えました。

現代的・未来的な日本酒のパッケージデザインかつ30年後の日本酒のデザインって、、、と一番難しかった部分です。

とはいえ現代的・未来的を表すのにはシンプルで無駄のない、洗練されたイメージが必要と考え、アイディアを探しました。

その中で今回シンボルとなるロゴマークのようなものもなくお酒の名前、つまり文字がメインとなってくるので、文字をデフォルメし、現代・未来感を出そうと考えていました。

未来的なタイポの情報収集↓

プロセス公開ブログ9

情報収集の結果イメージ的には上記のような感じかなと。これを日本語で表現するためにAdobeフォントや既存フォントを探しました。

その結果上記のフォントをピックアップ。

老若男女が楽しめるということで、直線的なカクカクとしたものより、丸みのある柔らかなものの方が親しみやすいのではと考え右のAB akiというフォントをベースに作っていくことに。

プロセス公開ブログ10

これでかなり完成度が上がってきましたが、さらにここに水の印象を表すひと工夫を入れたらどうかとアドバイスいただき、文字を装飾し水を表現しました。

そして完成したのがこちら。

プロセス公開ブログ11

 

「若」の草冠の雫が個人的にもお気に入りです。

完成し、改めて見てみると

お米の旨味やお水のミネラルを感じられる味わいをグリーンとブルーのグラデーションで上品かつ爽やかに表現できたかなと思います。

また、白いパウチに貼るということだったので、色鮮やかでパッと目を引くデザインになったのではと思っています。

完成した作品はInstagramを通して応募。

最終的には10の酒造合わせて、1000近くの応募があったのではと思われます。

今回ありがたいことに見事大賞に選んでいただくことができ、実際にラベル化されることになりました!選考いただいた名鉄商店、原田酒造の皆様ありがとうございます。

自分が制作したものが世に出て、多くの方の目に触れることが嬉しいのはもちろん、たくさんの応募作品の中から選んでいただけたことは、普段のデザイン制作にはないコンペならではの達成感、充実感を味わえました!

↑内覧会にご招待いただき、商品化されたものを見てきました!スタッフの方によると、白黒や赤、黄色などを使ったデザインが多く青系はあまりなかったようです!実際に他の作品と並べられてパッと目を引くデザインだなと実感。たくさんの方に手に取っていただけると嬉しいです!

Written by Misa Hayakawa

Creative: Director: Katsuhiko Matsuura,picks design.inc
Designer: Katsuhiko Matsuura, Misa Hayakawa

 

 

賞を受賞したデザイン実績
  • 2022.12.1
  • グラフィックデザインパッケージデザイン
  • デザイン

2022年11月に開催された名鉄商店の日本酒ラベルデザインのコンペに参加しました。

デザイン発案〜完成、大賞に選ばれるまでのプロセスをまとめました。

ぜひ最後までご覧くささい。

名鉄商店コンペとは?

2022年12月1日に名鉄が“新たなスタイルのお土産屋さん”プロジェクトとしてオープンする「名鉄商店」。

https://www.meitetsu-shouten.jp/

コンセプトは「地域を食べる、地域をアゲる、地域へ還す。」

商品はすべてオリジナルとし、沿線事業者と協業して開発したものを取り扱い、地域の魅力・価値に目を向け、人々に生活や街を楽しんでもらうきっかけを提供することを目指す。

そんな「名鉄商店」開業に向けたコンペ企画“日本酒ラベルデザイン”に参加しました。

概要について(HPより抜粋)

「愛知県、岐阜県にたくさんの酒蔵があることを若い人に知ってもらいたい。日本酒を気軽に楽しみ、好きになってほしい。」との思いから、愛知・岐阜の10の酒蔵にご協力いただき、アウトドアに特化した「ポケットに入る日本酒」を名鉄商店で販売します。

これにあたって、商品のラベルに使用するデザインを募集します。選ばれたデザインは実際に商品ラベルとなって店頭に並びます。また、ラベルには受賞デザイナーのお名前・クレジットを表記します。

「各酒蔵の名称、立地および商品名から連想する現代的、未来的なデザイン。かつ30年後の日本酒の基本デザイン」をイメージして、横70mm×縦60mmでデザインを作成。

プロセス公開ブログ2

 

 

デザインの方向性を決める

まず10の酒蔵からどの酒蔵のラベルを作るかを決めるためにそれぞれのホームページをチェックし

愛知県の知多にある原田酒造さんの「衣が浦若水」にすることに。

原田酒造さんの特徴↓

1855年創業という歴史ある酒蔵さん。知多半島の気候と豊かな河川のお水を生かし、昔ながらの手造りな手法を受け継ぎ作られているそう。原田酒造さんの現行のラベルを見ると筆で名称を力強く書いた日本酒のラベルらしいデザインが多く、イメージをガラリと変えることができたらと思いこちらの酒造さんを選ばせていただきました。

各酒蔵の名称、立地および商品名から連想する

衣が浦若水と聞いて、第一印象としては、若い、水というワードから、爽やかな緑や青といったイメージが浮かびました。

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次に原田酒造さんのHPより、

蔵から望む小さな湾の“衣が浦”から【衣が浦若水】の商品名が生まれたこと、

知多半島丘陵に生育した米(若水)を原料とした、米の旨みを生かした純米酒であること

酒造りに適した知多半島の中心部の河川の伏流水を使用していること

を知り、湾・米・水というワードからも最初にイメージした緑、青(プラスもう一色アクセントを入れるかも?)という配色でいこうと決めました。

ここでモダンなデザインやトレンド、日本酒のラベルが実際にどんなものが使われているのか調査もしました。

プロセス公開ブログ4

デザインをしていく

色味とタイポグラフィの方向性が決まり、この要素をどのようにデザインしていこうと考えたときに、ふと日本酒の味わいとはどんなものなんだろうと思いました。

日本酒を実際に楽しんでいる方のレビューサイトを見てみると

※実際に参考にしたサイト→https://www.saketime.jp/

  • 爽やかな上立香で色味はなく、口当たり程よい甘さに随分としっかりと感じる味わいがあり芳醇、米感ある旨みが強く苦味もしっかりと強めで味わい深い。
  • 口に含むとおっと身構えてしまうザ日本酒系の酸味のかけら。でも言うほど広がらず、嫌味になりきらないギリギリ許せる範囲に着地。そしてそのアクセント以外は雑味なく小綺麗。

などワインのソムリエが語るような、味、口当たり、余韻、風味、香りなど様々な要素、観点から日本酒を楽しんでいることを知りました。

ここから混ざりあい、味の移り変わり、風味という抽象的な具合をグラデーションで表現しようと考えました。

そこで最初に作ったグラデーションがこちら。

 

プロセス公開ブログ5

 

3色を少しずつ散りばめて配色して混ざり合っている様子を表現しました。

が、引いてみるとブツブツしたように見えて不自然なのと、色の混ざり合っている部分が濁ってしまっているのでもっとシンプルなグラデーションにしたほうがよいとアドバイスをいただき、下記のようなグラデーションに変更しました。

プロセス公開ブログ6

 

3つの色が綺麗に混ざり合い上品さもプラスされて良い感じに。

ピンクは日本酒の柔らかな甘味や未来感を表現したくアクセントで入れてみましたが、最初にイメージした「湾・水・米」を表現するには、ピンクではなく、湾=青、水=水色、米=緑(稲色)の方が爽やかに表現できると考え下記に変更しました。

プロセス公開ブログ7

とても爽やかな瑞々しい綺麗な印象のグラデーションになりました。

文字のグラフィックについて

ここに文字を入れていきます。

まずシンプルに丸ゴシック系の文字を入れてみました。

プロセス公開ブログ8

なんかイマイチパッとしません・・・。

ここでテーマである現代的・未来的なデザインについて考えました。

現代的・未来的な日本酒のパッケージデザインかつ30年後の日本酒のデザインって、、、と一番難しかった部分です。

とはいえ現代的・未来的を表すのにはシンプルで無駄のない、洗練されたイメージが必要と考え、アイディアを探しました。

その中で今回シンボルとなるロゴマークのようなものもなくお酒の名前、つまり文字がメインとなってくるので、文字をデフォルメし、現代・未来感を出そうと考えていました。

未来的なタイポの情報収集↓

プロセス公開ブログ9

情報収集の結果イメージ的には上記のような感じかなと。これを日本語で表現するためにAdobeフォントや既存フォントを探しました。

その結果上記のフォントをピックアップ。

老若男女が楽しめるということで、直線的なカクカクとしたものより、丸みのある柔らかなものの方が親しみやすいのではと考え右のAB akiというフォントをベースに作っていくことに。

プロセス公開ブログ10

これでかなり完成度が上がってきましたが、さらにここに水の印象を表すひと工夫を入れたらどうかとアドバイスいただき、文字を装飾し水を表現しました。

そして完成したのがこちら。

プロセス公開ブログ11

 

「若」の草冠の雫が個人的にもお気に入りです。

完成し、改めて見てみると

お米の旨味やお水のミネラルを感じられる味わいをグリーンとブルーのグラデーションで上品かつ爽やかに表現できたかなと思います。

また、白いパウチに貼るということだったので、色鮮やかでパッと目を引くデザインになったのではと思っています。

完成した作品はInstagramを通して応募。

最終的には10の酒造合わせて、1000近くの応募があったのではと思われます。

今回ありがたいことに見事大賞に選んでいただくことができ、実際にラベル化されることになりました!選考いただいた名鉄商店、原田酒造の皆様ありがとうございます。

自分が制作したものが世に出て、多くの方の目に触れることが嬉しいのはもちろん、たくさんの応募作品の中から選んでいただけたことは、普段のデザイン制作にはないコンペならではの達成感、充実感を味わえました!

↑内覧会にご招待いただき、商品化されたものを見てきました!スタッフの方によると、白黒や赤、黄色などを使ったデザインが多く青系はあまりなかったようです!実際に他の作品と並べられてパッと目を引くデザインだなと実感。たくさんの方に手に取っていただけると嬉しいです!

Written by Misa Hayakawa

Creative: Director: Katsuhiko Matsuura,picks design.inc
Designer: Katsuhiko Matsuura, Misa Hayakawa

 

 

賞を受賞したデザイン実績